2021-02-17
まちづくり
採算だけでは語れない「地方の廃校活用」の面白い事例について
川村 健治
かつての上司から西興部の廃校を活用したゲストハウスについて、意見が欲しいという連絡がありました。
私の回答は、以下の通りです 。
(原文ママ)
ゲストハウスは、地方でも都心でも宿泊単価2000円から3000円程度で繁忙期でもそれほど上がりません。メインターゲットはバックパッカーで、景気の影響を受けにくい利点はありますが、参入障壁も低いため既に都市部では全国的にレッドオーシャン状態です。
また三密状態なのでコロナ渦では非常に不利です。
地方部では、競合が増えにくいので、家族経営や他に本業がある状態であれば十分に成立します。
それ単体でもビジネスとして成立させることはできるかもしれませんが、ある程度、観光的な素地があったり、バイカーが立ち寄るコース内に立地してるとか、宿主の人間的魅力があるとか、何かの聖地であるとか、有名な料理があるとか、そういう要素が欲しいところです。
本件については廃校利用ということで、全国的にも珍しいです。建築基準法や設備工事費用のハードルが高く、採算性のある計画には滅多になることがないので。
私は、単価のアップサイドが弱く、薄利のなることが確定してるのでやりません。民泊の方がやる気がします。
以上
採算を重視したビジネスの観点からは残念ながら上記のように返答せざるを得ません。
しかしながら、採算の観点のみで語ると面白さが欠落してしまうこともまた事実です。だからこそ、今回は地方の廃校活用の意義と面白さについて考えてみたいと思います。
廃校のイメージ(写真:ごじまま /photoAC)
立場が変われば見方も変わります。この事業を行う事業主、地域住民、地方創生に関わる人、行政など、一つの事業には多くのステークホルダーが存在します。
採算性を起点にすれば、そもそも地方創生という概念さえも成り立たないことになります。多くの人が、それと真剣に向かい合い、悪戦苦闘し、新たなロールモデルを作ろうという過程にあるのが今です。
そんな中、廃校利用は、全国的に重要なキーワードとなっており、雑誌の特集に組まれることも目にするようになりました。文部科学省の〜未来につなごう〜「みんなの廃校プロジェクト」では、活用方法を募集している廃校が一覧となっています。
私もたまに見るのですが、いつも悔しく思うのは、宿泊施設にすることの法的・ハード的なハードルの高さです。学校施設を宿泊施設として用途変更するための基準は非常に高いです。また、数年間か使われていない期間があると、給排水設備が故障していることも珍しくなく、その工事に数千万を要することもよくあります。宿泊施設にすることは、多くはここで挫折します。
ギャラリーとか、水回りを必要としないような用途は、法的にもハードル的にも簡単だと思います。
(だからこそ、西興部の事例は、かなり珍しいと思います)
昨年、私も石狩市厚田エリアで募集していた件について問い合わせをしましたが、地元の福祉系事業者の事務所としての活用が決まったようです。素晴らしいことだと思いますが、何か地域の魅力を高めるような企画と結びついて欲しいなと思う次第です。
『じゃあ、お前がやれよ!』
と言われてしまいそうですが、無人運営で成立するような事業ならできるかもしれません。例えば、シェアオフィスとかコワーキング施設のようなリモートワークやワーケーションの拠点となるようなもの…これならできるか知れません。※もし、そのようなお話があれば、是非ともお声がけください。
以下、私が注目している地方の廃校利用の事例を紹介します。
① 太陽の森ディマジオ美術館(北海道新冠村)
<概要>
フランス幻想絵画の巨匠であるジェラール・ディマシオの作品が常時展示されてます。「自然との共生」、「自然とアートとの融合」をコンセプトに掲げられていて、広大な土地である北海道ならではの展開がされています。
② 朝日里山学校(茨城県石岡市)
<概要>
地元の農産物・自然・歴史などといった地域資源を活かしたさまざまな体験プログラムを楽しむことができる体験型観光施設です。昭和の懐かしさを感じさせる建物を活かしながら田舎体験をできる施設です。
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文:川村 健治
編集:簡 孝充
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