百貨店や大型商業施設のビジネスモデル転換-コロナ渦で求められること-

space palette labo編集部

新型コロナウィルスの感染拡大は、私たちの生活を大きく変えただけでなく、あらゆる業界に影響を与えました。その中でも緊急事態宣言による休業申請や時短営業の要請によって、百貨店業界や大型商業施設も大きなダメージを受けており、各数値にも表れています。

今回の記事では、コロナ渦において百貨業界が受けた影響と今後はどのような施策が求められるのかについて考察いたします。

コロナによる大打撃が百貨店業界に与えた影響

新型コロナウィルスの感染拡大に伴って発令された、「緊急事態宣言」。飲食業界や観光業だけでなく、その影響は百貨店業界にも及びました。緊急事態宣言対象地区に該当する店舗は、土日休業や時短営業等に加え、昨今ではデパ地下を対象とした人数制限が課されるなど非常に厳しい状況に置かれています。

 日本百貨店協会が公表した「令和3年6月 全国百貨店売上高概況」によれば、今年(2021年度)上半期累計の伸び率は10.3%増ではあるものの、コロナ前の2019年と比較して27.3%減という結果に。

また、商品別では主力の衣料品が9.8%減と苦戦を強いられているものの、巣ごもり需要から好転に転じた商品もいくつか見受けられました。しかしながら、依然として厳しい状況下にあることは言うまでもなく、先行きの見えないコロナ禍において今後のビジネスモデルを今一度考える必要があるでしょう。

インバウンド観光客の激減

コロナ禍以前から、百貨店業界では若年層の顧客離れという問題はありました。そのような潮流への打ち手となっていたのはインバウンド観光客の取り込みです。インバウンドとは訪日外国人観光客のことを指し、都心部に位置する百貨店や大型商業施設は観光客の恩恵を受けてきました。

一時期は、インバウンド観光客による『爆買いニーズ』を最大限に取り込むために、テナントや商品構成を入れ替える対応をした大型商業施設も多かったはずです。

コロナの感染拡大に伴い、日本だけではなく各国が水際対策を設けるようになり、国をまたいだ観光が急速に減少していきました。結果として、インバウンド観光客が激減したことで、売上の減少に歯止めがかからなくなったともいえるでしょう。

コロナ渦に大型商業施設が目を向けるべき戦略

百貨店をはじめとした大型商業施設が今後も生き残っていくためにまず大切なのは、原点に立ち返ることです。自社・自店の顧客がどのような生活をし、どういったものを欲しているのか、既存顧客の実態把握から始めてみましょう。

そのうえで、力を入れていくべき分野として「デジタルマーケティング」と「マイクロツーリズム」の2つをご紹介します。

デジタルマーケティングの強化

まず、オンラインサービスなどデジタル技術の強化は急務です。昨今ではこれまでのネット通販に加え、販売員が商品をネット上で生中継する「ライブコマース」といった手法を取り入れるところも見受けられます。

小田急百貨店では今年5月に創業60周年記念特別企画として、ライブコマースを実施。ライブコマースでは「今夏注目の大人のマスクメイク」をテーマに化粧品を紹介し、コロナ禍で思うように買い物を楽しめない女性をターゲットに好評を博しました。

売り上げ全体に対するネット通販の割合はまだそれほど多くはないものの、コロナの影響が長引く中、その需要は引き続き高まっていくと考えられます。

マイクロツーリズムに目を向ける

マイクロツーリズムとは、自宅から約1時間圏内の地元や近隣を対象とした短距離観光のことを指します。

コロナ危機から観光業界を救う一手段になればと、株式会社星野リゾートの代表である星野佳路氏が提唱しました。主に観光業界を指して使われることの多い単語ですが、国内客や地元のエリアに目を向けることの重要性を説いているマイクロツーリズムは、どこか百貨店業界にも通じる部分があるのではないでしょうか。

インバウンド需要が当分見込めそうにない今、地元地域に目を向けていく必要性が再度問われています。

新しい生活様式で求められる百貨店の姿

コロナ禍では新しい生活様式が求められていることも、忘れてはいけません。顧客に安心して来店してもらえるよう、消毒や検温をこまめに実施することはもちろん、接客体制にも工夫が求められます。

非接触型体温計エントランスに設置される非接触型 体温計のイメージ(写真:photoAC)

また、場合によっては商品の消毒や飛沫防止対策用シートの設置が必要となるなど、感染対策には気を配る必要があるでしょう。接客の仕方についても、声かけを控えるほか、一定の距離を保つなどこれまでとは大きく異なるサービスの在り方が問われています。

一方で盲点になってしまいがちなのが、従業員へのレギュレーションです。大型商業施設のコロナ対策となると、対お客様向けの施策にばかり目がいってしまいますが、クラスターが起こりやすいのは従業員です。休憩室や喫煙所における一定基準のレギュレーションは重要でしょうし、館内に立ち入る前にはお客様と同様に検温や消毒を徹底することも重要であるはずです。

何れにしても、コロナ以前の常識で施設運営ができるようになるにはまだ時間を要するはずです。お客様への対策はもちろん、館内で働いている従業員や取引先などあらゆる側面での対策が必要になってくることは言うまでもありません。

まとめ

百貨店業界は今後も苦境が続くことが予想される中、生き残りをかけて積極的にアクションを起こしていかなければなりません。

コロナ以前にはインバウンド観光客頼りの経営をしていたところもあるかもしれませんが、やはり、国内客(もっと言えば地元のお客様)向けにどのような集客施策を展開していけるかが重要であるはずです。

マイクロツーリズムの視点を持ち、地域に根差した顧客のニーズを分析・開拓することはもちろん、以前から利用してくれている顧客が離れていかないようにする工夫も必要でしょう。

今現在だけでなく、コロナが長引いてしまった時のことも含め、様々な観点から対策を講じていくことが大切です。

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文:織瀬 ゆり

編集:簡 孝充

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