#02今更聞けないリーシングの基本と業務の流れ【デベロッパー営業の基本 ノウハウ】

space palette labo編集部

10年以上の不動産営業マン経験者がノウハウを提供する連載シリーズ。第2回目は「リーシングの基本と業務の流れ」です。リーシングとは言葉通りリース業務の事を指します。賃貸住宅の客付けも不動産会社によってはリーシングと呼びますが、ここではデベロッパーが開発した施設のテナントリーシングについて解説していきます。

この記事を読んで頂ければ、リーシングとは何か?という疑問をお持ちの方も、リーシングについてしっかりと理解してもらえる内容になっています。既にリーシングに知見がある方には、この記事を読んで、今一度リーシングについての基本を押させてもらえればと思います。

リーシングの基本

ショッピングモール

ショッピングモールのイメージ(写真:SunnySide24 / photo AC)

テナントのリーシングは、賃貸住宅の仲介の様にただ闇雲に、客付けすれば良いという訳ではありません。商業施設の意向を考慮し、市場のニーズや近隣の出店状況を踏まえた上で、テナントを誘致し契約する。この一連のプロセスが、リーシング業務の基本的な流れになります。その為、一般の仲介業務に比べて、幅広い知識が必要で、不動産の知識以外にもマーケティングやビジネス的な知見も必要です。


それだけではなくリーシング業務をするにあたって、常に意識しておかなければいけない大切な事があります。では、どんな事を意識してリーシング業務を行えばよいのでしょうか?

リーシングの最重要事項

前述の通り、賃貸住宅の仲介とテナントリーシングには決定的な違いがあります。
賃貸住宅の場合、どんどん客付けをして、空室を埋める事に注力しますが、テナントリーシングの場合は、客付けはもちろんですが、綿密なリサーチを行い、どの区画にどんなテナントを入居させるか?を計画的に選ばなければいけません。その理由は、次の2つの相乗効果をリーシングに不随しなければいけないからです。


「集客を伸ばして施設全体の収益性が上がる事」


「商業施設の価値を高めるリーシングである事」

この2つはテナントリーシングの基本中の基本でありながら、活気ある施設作りの極意でもあります。選定の際は、常にこの2つを重要視しながらテナントを選んでいきましょう。もし、この2つを意識せずに、客付けをしてしまうと、

  • 施設内が代わり映えのないテナントばかりで退屈。
  • 利用客が思うように回遊してくれない。(隅々まで人が行き渡らない)
  • 施設を利用する客層が限られ、徐々に客数の現象が起こる。
  • トレンド要素が少なく、人が集まりにくい。

こんな残念な商業施設が出来上がってしまいます。
客付けやテナント入れ替えの際は、常にこの事を意識して、しっかりと心に留めておきましょう。
最も大切な事をお伝え出来た所で、次はリーシング業務の流れについて解説していきます。

リーシング業務の流れ

リーシング業務の流れについて順番に解説します。
リーシング会社によっては多少違いがあるかもしれませんが、押さえておくべき要点はどの会社も同じです。ここで要点をしかっりと押さえておきましょう。

ミーティングの雰囲気

会議のイメージ(写真:Yuganov Konstantin/ shutterstock)


リサーチ業務

まずは、オーナーにヒアリングを行い、要望を明確にした上でリサーチに取り掛かりましょう。
施設内のリサーチでは、現在入居しているテナントをすべてピックアップします。理由は言うまでもありませんが、テナント業種の偏り防止の為です。入居者リスト自体はすでにあると思いますが、体験談として

「店名」「業種」「どの年代に人気があるのか」「男・女・両性向けか」「生活必需か趣味か」

など、とにかく細かく項目を作ってリスト化することをお勧めします。そうすればフロアに足りていないテナント業種や、発展ヒントが一目で分かるようになるからです。
施設外のリサーチでは、商圏内のテナントの出店状況をリスト化します。近くに強い競合がいる場合は、出店を控えた方が良いパターンもあるからです。
商圏内のテナントをリスト化する方法ですが、ネット検索をかければリストは簡単に作成できます。しかしながら、時間があれば実際に足を使って見て回ってください。町を見る事は、デペロッパー的思考の勉強に最適ですし、次の流れでオーナーと打ち合わせをする際に、説明がしやすくなるなど効率的なコミュニケーションにも非常に役立ちます。

リーシング戦略の立案

リサーチしたリストを基にリーシング戦略を立てましょう。
空室が複数ある場合は、ここでテナントミックス(店揃えの最適化)の計画を立てる必要があるので、オーナーとリーシング会社のコンセプト認識に、齟齬がないか確認しておきましょう。
基本的には、商圏分析をして、競合を避けつつターゲットを決めてテナントの選定を行いますが、この時に差別化の出来るなどの良い要素があれば、どんどん取り入れていきます。
このタイミングで店舗の修繕や改装の有無、どの位の賃料で募集するかなど、様々な項目を具体的に決めていきます。ここまで来てようやく、テナントを募集する準備が整います。


営業活動・テナント交渉

ターゲット選定で絞ったテナント候補に、片っ端から電話で営業活動を行います。
経験上、リーシング業務の中で一番精神的に辛い作業ですが、ビジネス的に淡々とこなすしかありません。早く空室を埋める為には、とにかく数をこなす事を優先してください。これが一番の近道です。
アポイントが取れれば、物件資料を持参して商談に入ります。
オーナーと事前に打ち合わせしておき、ある程度、交渉の余地があるものについては、そのふり幅を前もって確認しておくと、交渉をうまく立ち回ることが出来るでしょう。
入居するテナントの業種によっては、用途変更が必要な場合もあるので、商談に入る前には必ず、確認しておいてください。

契約・開店サポート業務

交渉がまとまれば、後は契約に向けて、契約書や重説、謄本など必要書類を準備し、まとめておきましょう。
入居が決まり、開店をする前にテナントは内装工事を行います。オープン予定の日にちや、工事の予定期間など、必要な情報をある程度交換しておけばトラブルなくスムーズな契約が可能です。

以上で、テナントリーシングにおける一連の流れを解説しました。

本投稿のまとめ

いかがでしたでしょうか?今回は商業施設のリーシングについて解説しましたが、これが「商店街」や「グランドオープン」などの状況によっては、選定方法や、マーケティングの仕方が変わってきます。その時々で状況に合わせた臨機応変な対応や、その他の知識も求められますので、そこがリーシングの難しさでもあり、面白さでもあるのではないでしょうか?
オーナー側とテナント側をビジネス的に繋げる役割を持つリーシング業務ですが、難しく考える必要は全くありません。「双方の利益になる取引きをする事」と「来店するお客様をもてなし楽しませる事」シンプルに関わる人が喜ぶ事こそが求められている事であり、答えなのです。世の中の正解は常にシンプルなものです。

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文:楠本 貴之

編集:簡 孝充

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