2021-10-15
不動産管理
アフターコロナの空室活用-潜在的な需要を捉える4つの手法を解説-
space palette labo編集部
新型コロナ感染拡大によりテレワークが普及、オフィスビルの空室率は上昇し、平均賃料は下降しています。ビルを所有しているオーナーや管理事業者は、どのような空室対策を行うべきなのでしょうか。
本投稿では、現在の空室データから現状を把握し時代に合わせた空室活用の方法を考えてみたいと思います。
【目次】
都心部の空室率と平均賃料より現状の把握
新型コロナ感染拡大の影響を受け、オフィスビルの空室率が増加し平均賃料が下落の傾向にあります。オフィスビル仲介会社「三鬼商事」が2021年9月に発表したデータによると、東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の平均空室率は6.43%となっています。上記の数値からも常に上昇傾向にあった相場がコロナ以前と以降で大きく変化してきたことがわかります。
2020年9月に3.43%であった平均空室率は、2021年9月には6.43%。1年で約2倍の数値となっています。なお新型コロナ感染症が拡大する前の2020年2月の空室率は1.49%。1年で約2倍、コロナ前の約4倍という数値からもその影響度合いは明確です。
一方で平均賃料は新築・既存ビル共に下降しています。2020年9月には22,733円でしたが、1年後の2021年9月には20,858円と約1割下降している事が分かります。2020年2月の平均賃料は全体で22,548円、新築ビルが30,339円、既存ビルは22,331円だったため、新型コロナ感染症拡大により既存ビルへの影響が大きく目立つ結果となりました。
このような状況下で、物件オーナーや不動産管理会社はどのような対策を取るべきなのでしょうか?
アフターコロナに注目すべき4つの空室活用方法
前述のように、コロナ渦に不動産経営における重要な2つの指標は大きく変化してきました。従来型の管理方法のみでは、これまでの収益を保てなくなる物件も決して少なくはないはずです。従来型の不動産収益(賃貸借や定借による収益)のみではなく、時代に合わせた方法がより重要になってきているのではないでしょうか。
ここでは、従来型不動産管理の代替えとなるような空室対策方法について解説いたします。
最初に解説させて頂くのは、空室をフロア内に複数の個室を作り企業や個人に貸し出すレンタルオフィス、テレワークの会社員やフリーランスの方が利用するコワーキングスペースとして活用できる方法です。
コワーキングスペースはフロア内に大きなテーブルがあり、複数人で共用する形となっているものと一人ずつデスクと椅子を用意するタイプがあります。個室があれば、企業に会議室として貸し出すこともできるはずです。
コロナ渦にワークスタイルが大きく変化してきました。以前よりもリモートワークが中心となる企業も多くなったこともありますが、自宅ではない場所で仕事をしたいというニーズは高いものです。コロナ以前であれば、取り込めなかったような一般の会社員の利用も増えてきているようです。
郊外エリアでの集客には課題があるかと、都市部では需要が高く費用対効果の高いはずです。ただし、鳥取県では現在利用していない空室やスペースをリモートオフィスとして改修し、一定の要件を満たした場合、最大500万円の補助金制度がございます。
自治体によっては補助金支給があるケースもあり、工夫によって初期投資と固定費を抑えやすいため、検討の価値は十分にあるはずです。また、仕事で活用する場所はリピートしやすい傾向もあるため、安定的な収益となる可能性も高い手段です。
トランクルームには屋外・屋内の2つのタイプがあり、屋内タイプのトランクルームは部屋を数区画にパーテーションなどで区切り、物置スペースとして提供します。
部屋が狭い方や引っ越しを控えている方、荷物の多い女性などがターゲットとなります。
部屋のリノベーションなどの修繕費などが低く、オペレーションコストも割安であるメリットがあります。一方で、展開エリアによっては需要が低く、賃料も低い傾向であることは否めません。
ただしレンタルオフィスと同様に顧客が継続してレンタルすることで、安定した収益を得る事が可能です。
個人向けのレンタルスペース運営とは、スペースを時間単位で貸出す方法です。従来型の方法では年単位で契約を締結していたものを時間単位で貸し出すことで、新たなニーズを掘り起こしていく施策となります。
用途は個人が行うパーティーやテレワーク、企業が開催するセミナー・教室、展示会など多種多様ですあり、前述の会議室のように、法人で利用されるケースも多々あります。防音設備が整っている部屋は楽器の演奏スペースとしても貸し出すこともできるはずです。
ただし、収益については集客次第になり、安定性は低いケースが多いものです。自社で予約サイトを設けたり、スペースシェアリング型のサイトに登録したりといった方法が一般的ですが、物件によって収益性が高くなる場合もあります。レンタルスペースの集客に関心がある方はこちらの記事もご一読ください。
法人向けのレンタルスペース運営とは特に、店舗や商業施設の空き区画を1日単位で貸出す方法を指します。ホテルの共用部や宴会スペースを法人向けに貸出すというケースもあることでしょう。
コロナ禍で店舗の撤退が加速している一方で、催事やポップアップストアといった、手軽に出店したいという需要も増えてきているようです。貸し出しの機関としては、1日単位から長くて1ヶ月程度。場合によっては3ヶ月程度の期間になるケースもあるようです。
利用者の業種は様々ですが、アパレルや小売業の短期催事、飲食の間借り営業、企業のレセプション、撮影などのニーズが存在します。本格的な店舗出店の前にテストマーケティングの意味合いで営業してみたいといった目的で利用される法人が多いはずです。
集客の方法としては、個人向けのレンタルスペース運営と同様に自社で予約サイトを設けたり、スペースシェアリング型のサイトで行うケースが多いものですが、客層選びが重要になるはずです。
まとめ
都心部の空室率と平均賃料のデータから現状を把握し、アフターコロナにより進むであろう空室対策を紹介してきました。従来型の不動産ビジネスに従事されている方にとっては馴染みにくい方法かもしれませんが、空室が続いている場合には潜在的なニーズを掘り起こしていく必要があります。何れにしても、これまでと異なるターゲットにスペースを利用してもらう必要性が高まってくるはずです。
今回ご紹介した方法は比較的、投資を低く抑えられる方法となりますが、重要なのは収支シミュレーションを判断基準とすることです。基本とはなりますが、収益を元に投資額を決定すべきことで、どちらも切っても切り離せないはずです。
従来型の不動産管理方法と比較すると、収益の安定性は低いことが想定されますが法人顧客を獲得できれば、安定した賃料収入を長期にわたって見込める可能性が高くなります。ターゲット層を企業・法人に絞り空室活用を行っていく事も選択肢の一つと言えるでしょう。同時に、不動産管理事業者も今後しばらくは感染対策を切っても切り離せないものであることは言うまでもありません。特に商業施設のように多い環境には検温機器を設けたり、消毒等の対策は今後しばらく求められていくはずです。
この記事が空室対策をお考えの事業者様のお役に立てれば何よりです。
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文:田中あさみ
編集:簡 孝充