『中古住宅・リフォーム市場の倍増』という国家戦略プロジェクトからの10年を振り返る

川村 健治

当社がコロナ真っ只中の2020年7月に開業した山鼻温泉屯田湯旅館の意義についてツイートしたのが上記の文章です。

さて、本題に入りますが、そもそもこの日本には空き家問題というのがあり、国家としてはその再活用を促すために様々な施策を講じてきたわけです。

山鼻温泉 屯田湯旅館(massive sapporo公式ホームページより引用)

政府が10年間の経済政策の指針となる新成長戦略を閣議決定したのが、2010年だと記憶していますが、戦略では優先的に取り込む21の政策を「国家戦略プロジェクト」と位置付け、「中古住宅・リフォーム市場の倍増」がその1つに掲げられました。

2020年までに中古市場規模を8兆円に、リフォーム市場規模を12兆円にする目標を提示し、その実現に向けた具体的施策として、ホームインスペクション(建物検査)や瑕疵保険、住宅履歴情報の普及促進等、中古・リフォーム市場の整備のためのトータルプランの策定・実施等、国が本気で住宅ストック分野に本腰を入れたのです。

※詳細は国土交通省の公式サイトをご参照ください。

潜在的な市場ニーズを捉えたリフォーム市場のスタープレイヤー

国家戦略プロジェクトが動き出すまでに、『ブルースタジオ』や『東京R不動産』などはリノベーション市場でスタープレイヤーとしてのポジションを確立していました。中古住宅の良さが、自分らしいライフスタイルを求めるアーリーアダプター層に求められていたのでしょう。

特に、東京R不動産の存在は革命的でした。それまで不動産ポータルサイトは、駅距離や築年数・駐車場の有無など様々な検索項目によって物件探しをサポートしてきたわけですが、R不動産は、「レトロな味わい」「眺望GOOD」「水辺/緑」「改装しよう!」など、求められるライフスタイルを起点に物件探しをするもので、賃貸物件であっても自分好みに内装をリノベーションしたいという一般的には許されそうもないことも実現できてしまう魅力がありました。

2019年のリフォーム市場の実績は6.5兆ともいわれており、目標には遠く及ばず2011年の6.2兆円からの微増にとどまっておりますが、中古住宅の流通は、2014年の21,400件から2018年の32,500件と目覚しく伸びており、国家戦略プロジェクトの目指す方向性の通り進んできているのだと感じます。

今後もますますリフォームやリノベーション、コンバージョンなどによって、古い建物が再生し、また新しく価値を宿し、空き家問題をよりクリエイティブに解決していければ素晴らしいなと思います。特に考えたいのはその町の風景でもある伝統的建造物の活用方法です。スペースシェアリング等のインターネット時代ならではの手法で新しい活躍の場が生まれていくことを願っています。

さて、リフォーム・リノベーション・コンバージョンなど、この分野でよく使われる言葉ですが、混同しやすいので、整理してこの文章を締め括りたいと思います。

・「リノベーション」…既存の建物に対して新たな機能や価値を付け加える改装工事を意味します。

・「リフォーム」…ボロボロになった部分を修復する、老朽化したスペースを新しく改装する、といったケースをと言います。 リフォームはマイナスの部分を修復してプラスに戻すという意味合いです。

・「コンバージョン」…既存の建物の用途を変更して再利用すること」という意味です。

そのため、冒頭の山鼻温泉屯田湯旅館は、銭湯から無人ホテルへのコンバージョンということです。

それでは、また!

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文: 川村 健治

編集:簡 孝充

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