2021-01-19
まちづくり
地域活性は必要なのか?地域の暮らしに寄り添う取組の重要性を考える。
蒲生 寛之
地域活性という言葉を頻繁に耳にするようになってからもう何年も経っている気がします。私は不動産業に携わりながら、急速に進む人口減少に対して自分が住んでいる街がどうあることが暮らしていく上で幸せなのかを考えながら空き家の再生事業に取り組んでいます。
自分の好きな街並みが失われていく状況をどうにか変えられないかと考えたのがきっかけでした。私が暮らす街は函館の旧市街で、街並みが好きで選んで暮らしています。しかしながら、古い建物がどんどん解体され更地になっていく光景を見てはいられなかったために、空き家の再生事業に取り組みはじめました。
建物が解体されてゴミとして捨てられるというのは、使いたい人がいない(と思われている)事も理由の一つにあると思います。一方で、自分を含め自分の周りにはそういった建物をリノベーションして住居やお店やギャラリーにしたい人たちがたくさんいました。
そこで、きっとこれは『情報が行き届いていない事』と、『そもそも古いものに価値があるという事自体が理解できない人たちも大勢いるから』ではないかと考えるようになりました。建物が再生され、実際に人々が出入りする事例を世に発信していく事が必要だと考えました。
古い空き家が使われるように行ったお試し住込みモニター施策
最初に取り組んだのは、『お試し住込みモニター施策』です。函館旧市街地内の空き家に一定期間住んでもらい、仮に暮らすとしたら何が決め手になるかを教えてもらおうという企画です。
当時(2015年頃)の函館はこのような活動もあまり多くはありませんでした。そのため沢山のメディアに取り上げて頂き、他の物件オーナーさんからの問合せが増えて行きました。「私のところにも古い建物があるので一度見に来てほしい」という具合にです。
そういった流れで、今度は実際にお店を始めたい人や住居として古民家リノベーションしたい人などと建物をマッチングさせ、不動産屋として契約手続きのサポートをさせて頂いたり、同じ志を持って活動を始めた建築家やデザイナーと連携してお店をつくるまでのサポートをさせて頂いたりしてきました。
遊休不動産が人によって活用され、人々を受け入れる場ができていくことによって少しずつ自分が好きな街並みを守りながら、それ以上に新たな輝きが作られてきている事に日々ワクワクしています。
短期的な人集めと持続可能な小さな取組。地域住民はどちらを求めているのか?
函館の風景(写真:cosmepico/ photo AC)
タイトルに地域活性は必要なのか?と書きましたが、厳密には地域活性とはなんなのか?になるかもしれません。私が考える地域活性とは、持続的に人との繋がりが感じられる街なのではないかと思います。また、短期的ではなく中長期的な視点で考えるべきかとも思います。
地域活性を目的に予算を組んで単発イベントを企画し、○千人導入したけれど、周辺エリアの波及効果もなく、イベントが終わった次の日からまた寂しいまちに戻った。なんて話はよく聞きます。私自身の過去の経験から、一時的な賑わいをつくることが地域活性ではないということはよくわかりました。
一時的に○人人口が増えたということよりも、各々が自分の存在意義や参加意識を感じられるコミュニティが増えていくことの方が継続的な成長に繋がるからです。また、お店や場づくりはまちにオープンであるべきだと思います。地道ですが地域住民の暮らしには寄り添っていけるからです。
例えば、こんなことです。
ショーウィンドウからお店の雰囲気や暮らしの営みが伝わってきたり…
行き交う人々が自然に挨拶をしたり、趣味のコミュティ活動がいくつもあってその人達が使える場所があったり…。
夜に窓から漏れる明かりが綺麗であることを意識して電球色を選んだり…。
こういった、取り組みとしては小さなことを持続させていくことが結果として地域活性につながっていくのではないでしょうか?自分がしたい事と、それを喜んでくれる誰かを想像しながら起こすアクションが増えていくこと。暮らしの幸せが連鎖している街は外から見ても魅力的に見えるはずです。
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建物、地域、そして意識のリノベーション-遊休不動産と人が作り出す可能性について-
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文:蒲生 寛之
編集:簡 孝充
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