分散型ホテルがもつ地方創生の可能性―長野で感じた歴史の重み。そして、北海道について思ったこと―

川村 健治

出張で訪れた長野県で感じた北海道との違い

長野県東御市(上田市に隣接、「とうみ」と読む)にて、当社が新しいトレーラーハウス型無人ホテルのプロジェクトをスタートするため、初めて新千歳空港から松本空港の便に搭乗しました。松本市から上田市までは高速道路を使わず2時間30分程度の距離です。敢えて下道を選んだのは、日本の原風景を感じさせてくれる古民家とその景色を堪能したかったからです。

松本市内には、古民家を高級レストランに改装した「ヒカリヤ」があり、凄く格好良いと酔いしれるのも束の間、数えきれないくらいの古民家ショップが、存在することに気付き、北海道との歴史の差を早速痛感しました。

また、SATOYAMA VILLA 本陣は松本市内中心部から30分の位置にありますが、実際にお殿様が旅の休憩所として利用した建物を分散型ホテル※1として改装したものです。

古民家ばかりの風景に、まるでタイムスリップしたような感覚になりました。

日本は世界的にも長い歴史があり、観光資源として強い優位性がありますが、その中でも長野県というのは、特に魅力を放っています。このSATOYAMA VILLA 本陣は、分散型ホテルの事例としても有名です。

長野県松本市にあるヒカリヤ(写真:川村 健治)

分散型ホテルの起源とその可能性について

分散型ホテルとは、フロント機能を持つ建物と宿泊室の機能を持つ別個の建物(アネックス)から構成され、飲食や体験など、地域の別のプレーヤーに委ねることにより街全体をホテルと見立てるというものです。

ちなみに、その起源はイタリアにあるようです。

「町全体をホテルにする」というコンセプトのもと、宿泊スペース、飲食スペース、浴場などの設備や施設が地域内に分散しているホテルのこと。点在する空き家や歴史的建造物などを改装して宿泊場所にし、食事や銭湯は地域のお店を活用するケースが多い。

分散型ホテルは、イタリアのアルベルゴ・ディフーゾ(Alergo Diffuso)という取り組みがモデルになっている。

引用元:IDEAS FOR GOOD

イメージが湧きいくいと思いますが、私は、こう解釈しています。

「架空の世界であるディズニーシーの街並みが、リアルになったようなもの」

本場のアルベルゴディフューゾにおいては、数週間のバカンスを一つの分散型ホテル(つまり、一つの街)で生活することで、地元の生活体験を行います。富裕層にとっては、別世界のリアル体験であるだけでなく、子供の知見を広げる重要な教育の機会として認知されているようです。

観光庁は、今年度、多額の予算を分散型ホテルに充ててます。

観光庁は21年度予算と一体で編成された20年度第3次補正予算で、「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」として550億円を計上した。3次補正の総額からGoToトラベル事業分を除いた650億円の8割以上を占める目玉事業だ。

引用元:「活気づく分散型ホテル 観光庁予算化で後押しなるか」 TRAVEL JOUTNAL ONLINE

この分野は、これまではNIPPONIA というブランドを展開するNOTEという会社の独壇場という様相でしたが、当社MASSIVE SAPPOROも一気にここで存在感を示していく意気込みです。

歴史の浅い北海道で分散型ホテルを展開できるのか?

我々が住む北海道は、歴史は浅いと言われることが多いです。実際にお客様から、「古民家みたいな建物探して欲しい」と言われても、長野県にあるようなものは北海道の不動産市場にはなく、かろうじて、ややレトロ感のある築古物件がある程度です。

私の知り合いに、古民家を保存する活動をしている方が数名おりますが、実際には、なかなか保存することは難しそうです。

函館・小樽は、比較的多くの古民家が残っており、それが人気観光地となっている理由ということは言うまでもありませんが、北海道全体から見ればかなり例外的なことなのだろうと思います。だから、長野県に対抗しようという視点から歴史を観光資源やホテルの魅力にしようとしても、「古民家がないからダメじゃん」となってしまいがちです。

それでは思考停止です。

結局は、深浅に関わらず、歴史がない土地は存在せず、その土地独自のストーリー紡ぐことはできるのだ!という視点に立つべきなのだと思いを改めました。

そもそも民泊・無人ホテルは分散型ホテルであるという気づき

富良野のラベンダー畑富良野市のラベンダー畑、背景に北の峰(写真:中村 昌寛/ photo AC)

当社、MASSIVE SAPPOROは現在、富良野における事業展開を開始してます。ここを起点に分散型ホテルを作り出す活動をしていきたいと思っています。当社がこれまでやってきた民泊・無人ホテルも分散型ホテルとしての要素を持っています。民泊・無人ホテルは一つの建物に50室・100室とあるわけではありません。アパートの一室・戸建てなどの集合体です。

これまでの一般的なホテル旅館が集合型ホテル、垂直型ホテルと呼ぶならば、それに対し、民泊・無人ホテルは、対義語として分散型ホテルと呼んで差し支えないと思うのです。

そして、この活動の規模が大きくなれば、それはまさに地方創生の実現にもつながると信じてます。

----------------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------------

文: 川村 健治

編集:簡 孝充

スペース提供者様向けサービス概要

従来の方法だけでは利用されにくくなった空間。space paletteを活用して新しい活用方法を探すお手伝いを致します。インターネット全盛の...

ダウンロードはこちら

関連記事