ポップアップストア実施費用の考え方ーコスト配分の優先度についてー

space palette labo編集部

ポップアップストアや短期催事を成功させるために、費用バランスを考えていくことは重要です。どんな企業でも予算には限りがあるはずです。それらを適正に配分できるためにまずは目的と手段が明確である必要があります。

この記事では、ポップアップストアの開催時にかかる費用を適正に配分していく方法を解説させて頂きます。

ポップアップストア実施の事前知識

仕事を進める上で目的が明確であることが近道です。ただし、経験したことがないものには戸惑ってしまう方も多いことでしょう。ポップアップストアが未経験の方は実施目的と言われてもピンとこない方も多いことかと思います。そこで、ここでは初心者の方でも簡単に目的を整理していく方法について解説していきます。

定量的な目標から『目的』を分類

まず、ご覧いただきたいのが下記の図です。ここでは販売目標と集客目標という具体的(定量的)な指標に基づいて目的を整理したいと思います。目的という言葉は少々曖昧なニュアンスがあるため、迷ってしまう方も多いはずです。そこで、目標という具体的な指標から目的を整理すると良いと思われます。

ポップアップストア開催目的の分類

販売目標の軸について

まずは、表の縦軸に記載している販売目標について解説いたします。『高』、『低』という言葉でまとめておりますが、比較対象は現在の販売チャネルとお考えください。例えば常設店舗の運営を既に行われている場合は、常設店舗。通販(EC)等のチャネルで展開している場合はそのチャネルと比較して、より多く目標を設定されるのであれば『高』。より低い販売数でも良いという場合は『低』とお考えください。

集客目標の軸について

次に考えたいのは集客目標です。上記と同様に比較対象となるのは現在の販売チャネルです。現時点での集客目標と比較し、より多くの集客数を求める場合には『高』。現時点より、低くても良い場合には『低』をお選びください。

上記の2つを選択すると、4つのカテゴリー(A,B,C,D)のいずれかに整理することができます。この4つのいずれかに分類することで、ご自信(自社)がどんな目的でポップアップストアを実施すべきかを組み立てていくことができます。

下記の表にて4つのカテゴリを細かく解説していきます。

【4つのカテゴリーと実施目的について】

Aカテゴリーの場合

現在のチャネルよりも販売と集客の双方において高い目標設定をしたい場合です。つまり、実施の目的は『販路拡大』と言い換えることができるはずです。実際にポップアップストアやイベントを開催を検討されている方はこの目的が最も多いのではないでしょうか。

Bカテゴリーの場合

販売目標が低く、集客目標が高い場合という状況です。言い換えると、既存のお客様にはあまり知られたくないけど、販売数を伸ばしたいという場合がこれにあたります。つまりは『在庫処分』が目的ということです。特に大量の在庫を抱えているメーカーが期末の時期によくあることです。

期初に生産した在庫が年間を通じて予定通り捌けていれば在庫処分を行う必要はないかと思いますが、従来行ってきたようなセールやフェアのみでは想定よりも販売数が伸びないことが多いものです。特に流行に左右されやすい商品を販売している業種だと、極力は決算期の前に1つでも多くの在庫を販売しておきたいというケースも多いはずです。

Cカテゴリーの場合

販売目標は低いが、より多くの人目に触れたいというケースがこちらになります。このようなケースもとても多く見受けられます、例えば、『商品(自社サービス)認知の獲得』をしたいという目的です。例えば、目新しい電化製品や美容器具など、高単価な商材の場合には量販店でいきなり買ってもらうことは難しいものです。そのため、お客様には購入の前段階で商品に触れてもらう機会を創出したいというニーズも少なからずあるものです。

Dカテゴリーの場合

最後に考えたいのは、販売目標も集客目標も特にないという状況です。このケースは新規参入の方に多いものです。つまり、これから開業してみたいという方やまずは実践を経験してみたいという方がこちらに該当します。この場合はテストマーケティング(オペレーション)が目的なのかと思います。全くの新規で事業展開する場合のみではなく、現在とは違う商圏で商売をはじめてみたい場合などがこれにあたります。エリアによって客層は違うものですから、テストマーケティングを通じて違いを体験してみたいという方も多いことでしょう。

上記のように定量的な目標に則り、目的を明確にしていくことでその後のタスクも整理されるはずです。つまり、どんな場所で展開し、どの程度の人員リソースを配置すべきか。店内の設備や集客をどう考えるべきかというタスクが明確になるはずです。

目的が明確になったところで、次の章では手段とそれに応じてかかる費用について考えていきましょう。

ポップアップストアの目的と手段、コスト配分の優先度

目的が明確になったところで、どんな手段でポップアップストアを開催すべきか、そしてそれに応じた費用配分の優先度を考えたものが下記の図となります。

※あくまで、費用配分の優先度を考察したもので、金額の大小ではございません。

ポップアップストアの開催目的と手段、コスト配分の優先度

(A)販路拡大にはイベントや商業施設での展開

より多くの人に商品やサービスを知ってもらい、かつ現在のチャネルよりも多くの販売数(日商)を作りたいという場合には客層の近いイベントや商業施設に短期催事出店することが有効な手段です。ここで重要なのはその場に来られる客層が自社の客層に近いかどうかを吟味するという点です。例えば、ハンドメイド雑貨を販売している事業者はハンドメイドマルシェのような場所は有効であり、過去実績でどの程度の客数があったかは事前に把握しておくべきです。この点は商業施設の短期催事に出店する場合にも考えておく必要があります。

既にお客様がたくさんいる場所に出店する為、広告などで人を集める必要がなく、必要な設備(什器やトルソー等)は運営側が保有しているため、安く借りられる場合も多いです。一方で、賃料(出店料)と人件費にはコストをかけないと、人通りが多い場所を借りられなく、仮にお客様が押し寄せても捌けないことになってしまいます。そのため、コスト配分の優先度としては、賃料(出店料)と人件費を『高』、設備と広告費を『低』としております。

(B)在庫処分にはシークレットセールで展開

在庫処分を効率的に行いたいという場合によく使われるのが、シークレットセールでの販売です。リアル店舗での対面販売の代替え手段として、フラッシュマーケティングと言われる手法(インターネットメディアでのシークレットセール)で販売される手法もあります。

ただし、メディア側の規制等で販売したい商品や値引率に制約があり、思うように在庫を処分ができないことやネット販売のブランド価値の毀損につながりやすいと考えられる企業も決して少なくはありません。ネット販売の場合は履歴が残りやすく、転売ヤーに大量に購入されてしまうリスクも高いからです。多少効率が悪くてもリアル店舗でのシークレットセールを活用される企業が多いことにも頷けます。

コスト配分の優先度としては、出店料(賃料)は選択肢に幅があり、低く抑えられる場合も多いため『中』。人件費はそれなりにかかるため『高』。設備費用は場所と業種により大きく異なりますため、賃料と同様に『中』。基本的には集客が必要なため、『高』としております。

(C)商品(ブランド)の認知獲得には人通りの多い場所で展開

自社の商品をより多くの方に知ってもらいたい場合、やはり人通りが多い場所で沢山のお客様の目に触れられるような場所での展開する必要が出てきます。そのため、コスト配分の優先度は、賃料のみを『高』、人件費を『中』、設備と広告費を『低』と記載しております。

販売目標の優先度を低いものと定義しておりますが、その場では商品を販売しない(できない)ことも多く見受けられます。考え方としては、商品のサンプリングに近いかもしれません。つまり、体験を通じて口コミを起こしていくことやSNSで拡散してもらうようなことを目的しているため、その場の販売数ではなく、集客を優先するからです。

(D)テストマーケティングには極力費用を抑えた展開

最後に解説したいのが、店舗営業の流れを経験したいため、とりあえず短期出店をしてみたい場合についてです。本来は夜間時間帯のバーである場所の昼間の時間帯を借りて、ランチを提供する飲食店を営業してみたり、休業中の店舗を活用して別の業態でとりあえずやってみるというものがこちらに該当します。

お店こういった方の場合、本格的な営業とは異なるため費用は極力抑えて運営することをお勧めします。テストマーケティング期間を通じて、本来の営業には何が必要かを探ることが目的であり、本番(常設店舗での本営業)に対してコストを配分すべきであるはずです。

そのため、コスト配分の優先度は設備のみを『中』、それ以外は『低』と位置づけております。設備も工夫次第では低く抑えることができますが、この場合は費用を極力費用を抑えたなが展開することが望ましいかと思われます。

まとめ

この投稿では、ポップアップストアを実施する目的を整理し手段とコスト配分の優先度を解説してきました。特にコスト配分の優先度については、全ての事業者様に当てはまるものではありません。ただし、まずは目的を整理して、何に重点を置くのかを考慮するフレームはあらゆる事業者様の共通項であるように思えます。

どんな企業でも時間と予算には限りがあるものです。目的に最短距離で到達していくために、まずは目的を明確にし、コスト配分という方針を予め決めておくことはとても重要です。

この記事が少しでも小売事業者様のお役立ちになれれば幸いです。

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文/編集:簡 孝充

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