2021-06-17
催事・ポップアップストア
ポップアップストア運営のメリットとデメリットーその定義と活用シーンを解説ー
space palette labo編集部
近年、ECをはじめとしたデジタルチャネルが急速に拡大する一方で、リアル店舗の価値を見直すような潮流もあります。販売チャネルをECのみという事業者も多いことかと思いますが、やはり店舗だからこそ体験できる価値も少なからずあるはずです。
この記事では、小売事業者の方向けにポップアップストアについて解説させて頂きます。
リアル店舗で営業をしてみたいというEC事業者の方や店舗運営を検討されている方はご一読ください。
ポップアップストアの概要
まずは、ポップアップストアはどんなものなのかを理解して頂くために、概要とその起源を解説致します。
ポップアップストアとは期間限定で出店される店舗のことを指しています。百貨店やショッピングモール等で良く見かける一時的にその場所で営業されているお店です。イベントやプロモーションと連動して実施されるケースが多いようですが、昨今では様々な目的で活用がされています。
ちなみに、ポップアップストアの起源はイギリスにあるようです。
ポップアップ・ストアは2002年、ロンドンのチェルシーで大手スーパーがクリスマス商戦で勝ち抜くため埠頭に船を浮かべ仮店舗を開き客の注目を集めたのが始まりと言われている。それが英国内で一躍有名となりその後はファッション業界から果ては自動車業界までもが商品のアピールとしてポップアップ・ストアが一躍大ブームとなった。
引用元:wikipedia
前述の引用文が示すように、元々は注目を集める告知施策として実施されたことが起源のようです。なお、百貨店やショッピングモールには昔から期間限定の催事もありました。これらに明確な違いは存在しないため、ポップアップストア=短期催事と考えて良いものです。また、ポップアップリテールと呼ばれる場合もあるようですが、これらもほぼ同様の意味となります。
起源は商品やサービスを知ってもらうために利用されはじめたものですが、昨今では、多種多様なシーンで実施されてます。特に、期間限定で販売しているグッズや商品等を取り扱っている事業者や常設店舗を構える前段階のテストマーケティングという位置付けで実施される企業も増えてきているようです。
ここでは、どんな目的で利用される場合が多いのかを解説していきます。
ショッピングモールの売り場のイメージ(写真:shutterstock)
特定商品を数量限定で販売したい場合
映画やアニメの放映期間に限定した販売。また、アーティストのCDリリースに合わせて、関連グッズ販売等の販売を行うというケースがこれにあたります。常設店舗の一角に特設コーナーを設けて販売するスタイルもありますが、より多くの方に商品を購入してほしい場合にポップアップストアで販売するケースもあります。
余剰在庫を捌きたい場合
アパレルのようにトレンド要素の強い商品を抱えている企業が、シークレットセールを開催する場合がこれにあたり、特に期末のタイミングに実施されることが多いものです。というのも、あらゆるメーカーは販売目標に応じて数量を決定していくものですが、市場動向により目標値と実売数に乖離が生まれてしまうことが多いためです。
そのような溝を埋め、余剰在庫を減らしていく目的で実施するケースも多く見受けられます。この場合は大幅に値引きをして大量に販売することが多いですが、ネット販売だと履歴が残りやすく、転売ヤーの対象になりやすいこともあり、それほど商品が流通していないエリアでこっそりと実施されることが多いものになります。
お客様やファンと接点を取りたい場合
ECをはじめとした通販事業者やアーティストの『レコ発イベント』等がこれにあたります。普段は対面していないお客様と対面したり対話を通じて顧客エンゲージメントを深めていくことが目的としてポップアップストアを開催していたりします。特にECチャネルのみでは売上が上がりにくくなった事業者が次のステップとしてトライしてみたり、ファンサービスの一環イベントとして利用されたりします。
商品のPR目的である場合は、リアルな接点での体験価値を考慮し、SNSでの拡散を目標にしているケースも多いものですが、タレントやアーティストなど肖像権に関わるような場合は写真撮影を禁止しつつ実施するケースもあります。
厳密に言えば、もっと様々な目的でポップアップストアは活用されているものかと思いますが、概して上記のような目的で実施されていることが多いものです。
ポップアップストア運営のメリットとデメリット
次に、ポップアップストアを実施するメリットとデメリットについて考えてみたいと思います。
店舗開発コストを抑制できる
常設店舗の運営と比較して、ポップアップストアはその手軽さがメリットです。実際に常設店舗を作る場合には、保証金等の敷金、内装や設備投資、スタッフ人件費など多額の費用が発生してしまいます。ポップアップストアであれば、固定費を上げずに開催ができるため、広告費として計上する場合もあるはずです。そのため、限定品のように永続的に作り続けないことが前提の商品を販売する業態とは相性が良いはずです。
テストマーケティングができる
常設店舗の開発には多額のコストとリソースがかかります。どんな事業者でも失敗したくないはずです。また、出店後に上手くいくのか否かを把握しにくいものです。ただし、出店予定の場所やその側でテスト営業ができれば、その実績をもとに常設店舗を出した時の売上予測の根拠がより強くなるはずです。ポップアップストア実施時の売上を基準に判断することができれば、常設店舗は別のエリアに作るという選択肢も生まれ、店舗を作ってから大ゴケしてしまうリスクを回避することにも繋がるはずです。
自社ブランドのPRや告知ができる
どんな場所でポップアップストアを運営するのかにもよりますが、既存のお客様とは異なる客層を掴めるというメリットがあります。人通りの多い商業施設でポップアップストアを開催すれば、多くのお客様に商品を知っていただく機会にもなりますし、意外な場所で開催することで話題を醸成していくということも考えられます。
また、お客様と対面することで売上やPOSデータのみでは把握できないことが知れる機会ともなり、そのエリア毎の客層の違いにも気がつくはずです。リアル店舗を作るのであれば、お客様と対面することは必要であるはずです。
場所の手配が面倒
前述のようにポップアップストアは比較的新しい概念です。そのため、ポップアップストアの運営が前提で作られた物件はそれほど多くはないはずです。百貨店の催事場やショッピングモールのイベントスペースなどがこれに近しいものですが、少々異なります。基本的に常設のテナント向けに作られており、多くの場合はポップアップストアの運営が前提で作られていない場合が多いものです。
近しい商業デベロッパーがいる場合は要望にあった場所を手配できるかもしれませんが、デベロッパーが保有している自社物件の案内が中心となり、自社の目的にあった場所ではないことも多いはずです。
在庫管理のイメージ(写真:shutterstock)
管理オペレーションの手間
ポップアップストアの運営には店舗スタッフを手配する必要があります。既に近隣に自社の店舗を運営されている場合を除いて、その土地で人を採用するのか、自社のスタッフを派遣する手間が発生します。担当者の方がご自身で店舗に立てれば済むものでしょうが、多くの場合でそうはいかないものかと思います。
販売代行業者や人材派遣会社等に期間限定で人員を手配するという選択肢もありますが、何れにしても接客における人の管理にはそれなりにコストとリソースが発生してしますものです。
在庫の配送と管理コスト
普段は自店舗で営業をしている小売事業者が異なるエリアでポップアップストアを実施する場合、在庫の確保と配送業務が発生します。普段とは異なる場所に配送することになるため、常設店舗と同じ単価で配送ができない場合もあります。
また、ポップアップストア開催の数日前には販売在庫をストックしておく場所が必要になります。商業施設のように販売催事が前提の場所であれば、テナント用のバックヤードなどが場合も多いかと思いますが、通常のレンタルスペースなどはそのような場所が存在しないものです。
そのため、ポップアップストアの開催場所の近隣に別途貸し倉庫等を確保が必要になることもあり、会場代とは別のコストが発生する場合があることも考慮しておきたい内容です。
まとめと考察
今回の投稿ではポップアップストア運営のメリット、デメリットを中心に解説をしてきました。結論として言えることは、使い方によってはとても効率の良い手段であるということです。
常設店舗とポップアップストアでは勝手の違うものかと思いますが、テストマーケティングの意味合いでポップアップストアを開催して、次のステップで常設店舗を開発するという選択肢があった方が様々なリスクを回避できるものかと思います。自社の状況にあった場合にはぜひご検討してみてください。
この記事が、少しでも出店を検討されている小売事業者のお役に立てれば幸いです。
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文・編集:簡 孝充