フィルムコミッションとは?-撮影ロケの強い味方-

space palette labo編集部

近年、映画やドラマなどの映像作品を通じて、地域活性につなげていきたいと考える自治体も増えてきました。映像コンテンツの誘致に各自治体が積極的になってきたその背景にはフィルムコミッションの影響が考えられます。

この記事では、フィルムコミッションとはどのようなものなのか。また、成功事例やその利用方法について解説いたします。

フィルムコミッションとは

フィルムコミッションとは、映画などの映像を撮影するロケがスムーズに行えるように制作会社とロケ地の間に入る非営利団体を指しています。撮影ロケは、スタジオの外で行うため、撮影ロケを実施するまでには、ロケハンや申請手続きのほか食事の手配など多くの調整が必要です。制作以外の手間をできるだけ減らすことがフィルムコミッションの大きな役割です。

また、フィルムコミッションには、ロケを受け入れる側にも目的があります。それは、ロケ地を誘致することで地域活性化や観光振興に繋げていくことです。地方や過疎化が進む自治体は、映画やドラマのロケを誘致することで、土地が話題になり観光地化して人が集まることに期待しています。

現在、日本のフィルムコミッションの多くは地方自治体です。役所内の観光振興課のような観光を担当する部署が担っていることが多いでしょう。民間企業では、JR西日本などがフィルムコミッションと同様のサービスを行っていますが、日本ではアメリカのように警察や国をあげてのフィルムコミッションはないため、少々事情が異なるものです。日本ではアメリカのような道路を封鎖しての撮影などは法律のハードルも高いものとなります。

求められる3つの条件 

フィルムコミッションを行うには特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッションにより3つの条件が決められています。

ひとつ目は「非営利の公的団体であること」です。フィルムコミッションは、ロケ地を誘致するだけでなく、撮影ロケの手助けも行います。例えば、地方の撮影でエキストラがたくさん必要なときには住民からエキストラを募ります。お弁当の手配や宿泊施設の手配も行います。しかし、その見返りや手数料をとることはありません。金銭を受け取らないことで、制作会社とフィルムコミッションの立場が対等でいられるのです。ただし、宿泊施設や弁当代などの実費は支払います。

ふたつ目は「ワンストップサービスの提供」です。ワンストップサービスとは、一元的なサービスをいいます。「この手続きはA窓口、あの手続きはB事務所」と分担するのではなく、一つの窓口で対応します。

最後は「作品の内容を問わない」です。撮影ロケが必要な作品は、内容がさまざまです。ロケ地として使われたい内容もあれば、もしかしたらさほどメリットがあるとは思えない内容の作品もあるかもしれませえん。「表現の自由」を尊重するために、作品の内容をみてフィルムコミッションを受け入れるか受け入れないかを決めてはいけないという要件です。ただし、ロケ地になることであきらかに不利益があると判断される場合は例外のようです。

話題となった成功例

日本では2000年以降にフィルムコミッションが急速に発展しました。ジャパン・フィルムコミッションは2009年に設立され、現在は全国で350以上の団体がフィルムコミッションとなって撮影ロケに協力しています。

フィルムコミッションは、撮影ロケが無事に終了するだけではなく、公開されたあとにロケ地が話題になり、人が集まる観光地となって成功といえるでしょう。今までの成功例としては茨城県の映画「下妻物語」(2004年監督:中島哲也)や福島県の映画「フラガール」(2006年監督:李相日)ほか多数の映画やドラマ作品があります。映画の後援には福島県やいわき市、そして協力には「いわきフィルムコミッション」の名があり、フィルムコミッションとして協力し成功したことがわかります。映画「フラガール」は、町おこしをテーマに描かれた映画であり、興行収入15億円以上の大ヒット映画となりました。映画公開後も撮影された「スパリゾートハワイアンズ」は観光地となり、現在も人が多く集まっています。

フィルムコミッションが成功している例は、ロケ地として有名になることで、人が集まり観光地化し、訪れた人がロケ地をきっかけにして「土地を好きになる」という流れができています。

フィルムコミッションの利用方法 

地方自治体のフィルムコミッションを利用するときには、事前に手続きが必要です。横浜市を例に説明します。

横浜市では、横浜フィルムコミッションが横浜市文化観光局横浜魅力づくり室企画課内に設置されています。事前に電話やメールで問い合わせをして必要書類の提出をします。必要書類には、内容の企画書や絵コンテが含まれています。「撮影支援・協力依頼書」には、撮影の内容以外にも「横浜をどのように取り上げるのか」や「完成作品の提供方法」を記入します。提出された情報に基づいて適したロケ地の紹介が行われ、ロケハンや撮影の手伝いが行われます。道路での撮影には別途警察への届け出が必要になりますが、それらの手続きについてもフィルムコミッションにフォローしてもらうことが可能です。

まとめ

フィルムコミッションは、地方の活性化や過疎化への対策として期待されています。2016年には、知的財産戦略本部「映画の振興施策に関する検討会議」が首相官邸で実施され、ロケーション支援は今後ますます広がっていくでしょう。

この記事が映像作品に携わられる方のお役に立てれば幸いです。

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文:式部 順子

編集:簡 孝充

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