従来型不動産ビジネスとレンタルスペース経営ー本質的な4つの指標で比較ー

簡 孝充

従来の不動産ビジネス従事者にとって、レンタルスペース経営は少し馴染みにくいものなのではないでしょうか。新しいビジネスモデルが流行しはじめた時、一定割合の方は拒否反応を示すものです。

ただし、人口減少とともに増え続けている空室が活用されるためには、潜在的なニーズを掘り起こしていく必要があります。その際に、レンタルスペース経営という新たなカードがあっても良いものかと思います。

この投稿では、従来型の不動産ビジネスに従事されている方がレンタルスペースの運営とはどのようなものかを理解して頂くために解説したいと考えております。

参考となる部分があれば、自社にも取り入れて頂ければ何よりです。

経営の核となる指標で比較

結論から解説をさせて頂くと、従来型不動産ビジネスとの比較をまとめたのか下記の表となります。

従来型不動産とレンタルスペース経営の比較

比較の意図

そもそも、この記事を作成した意図は「レンタルスペース経営が優れているからトライしましょう!」といった短絡的なものではありません。2つのビジネスモデルの比較を通じて考えて頂く機会に繋げていくことにあります。それぞれに秀でている要素があれば、劣っている点もあるものです。

そもそもビジネスモデルが異なる訳ですから、一概に比較はしにくいものです。ただし、核となる共通の指標において比較を行うことで経営に必要な要素の理解に繋がるはずだと考えています。

比較の対象と尺度

レンタルスペースと対比させている従来不動産とは、マンションやアパート経営、商業不動産といった借地借家法における契約で管理がされている不動産経営を指しています。言い換えると、不動産を日毎で管理をする超短期契約か年毎で管理をすることのメリット・デメリットの比較とも解釈ができます。

ここで示している尺度については「高」や「低」という指標であり、定量的ではないため、少々抽象度が高くなってしまうかもしれません。都市と郊外などのエリアによっても勿論違いは出てくるものでしょう。

ただし、決して根拠がないものではありません。

4つの指標の詳細を解説

比較対象を4つに絞れるものかと言えば、恐らくもっとたくさんの比較を通じて考えていくべきなのかと思います。ただし、運営おける違いを理解して頂くためにはこの4つ程度が事前にわかっていれば最低限の雰囲気程度は理解ができるものだと考えております。

それでは、各指標を解説させて頂きます。

テナントの流動性

「テナントの流動性」とは、その場所の利用者(借主)がどの程度入れ替わるのかという視点です。普通賃貸借契約にしても定期借家契約で締結するにしても、少なくとも年単位で同じ利用者がその場を利用することになります。

対してレンタルスペース経営では、より短期間で借主が入れ替わるものになります。法的な解釈こそ異なりますが、ホテル経営のようなものをイメージするとわかりやすいかもしれません。

上記のような理由で従来型不動産経営には「低」、レンタルスペース経営には「高」と評価をしています。この指標が高ければ良いのか?という点に疑問を持たれる方も多いはずでしょう。ただし、それは一概にYESとは言い切れません。流動性が高ければ良い場合もありますし、低い方がポジティブである場合もあるからです。

オペレーションの負荷

借主の流動性が高いということは、それだけ出入りにおけるオペレーションの負荷が多いものとなります。居宅であっても商業不動産にしても、テナント(借主)が入れ替わる際には、清掃やその場所のレクチャー業務等が発生するものです。利用者が場所に不慣れであるために、様々な説明を求められることも多いはずです。

対して、従来型の不動産は貸したタイミング以降に発生するオペレーション業務は少ないものです。居宅であれば、契約期間中には月末に支払いがされているかのチェック程度という管理会社や大家さんも多いことでしょう。

そのため、従来型不動産経営には「低」、レンタルスペース経営には「高」と評価をしています。

市場環境の影響度合い

レンタルスペース経営は従来型不動産と比較すると、市場環境の影響はとても受けやすい傾向にあります。昨今のコロナ渦における環境を見ているとわかりやすいかと思いますが、人の流れが止まってしまった場合には極端に借り手が付きにくくなることもます。一方で、人の流れが多い時にはそれに従って、スペースの稼働率が上がる傾向があります。

対して従来型不動産でも特に居宅は、市場の影響度合いを受けにくいものです。どのような契約なのかにもよりますが、市場の変化に関わらず契約期間中は普段とは変わらない賃収が入ってくることになります。

そのため、従来型不動産経営には「低」、レンタルスペース経営には「高」と評価をしています。

収益の安定性

前述の市場環境の影響度合いに比例して、収益の安定性という観点では従来型不動産に「高」、レンタルスペース経営には「低」という記載をさせて頂きました。このロジックはいうまでもなく、閑散期と繁忙期における集客に違いがあるのか否かという点での比較になります。

従来型不動産は閑散期に収益が落ちてしまうリスクが低いものですが、一方で繁忙期の恩恵を受けにくいものです。つまりは収益の安定性の高さといった点ではやはり従来型不動産ビジネスの方が優れていると考えて間違いないものかと思われます。

まとめ

シェアリングエコノミーの発展とともに、増え続けているレンタルスペース経営と従来型不動産の比較を行いました。結論は、従来型不動産ビジネスと比較して優れている点もあるが、劣る点もあるということです。

前述のように、流動性が高く、市場環境の影響を受けやすいことには両面性があります。収益の安定性という観点では従来型不動産ビジネスの方が優れていると考えられるはずです。そのため、両者の特性を活かしたハイブリット運営を行うような不動産も昨今は増えてきています。つまり、一棟の物件を半分程度は普通賃貸借契約で運営し、半分程度は民泊やレンタルスペースとして運営するような手法です。そうすることで、閑散期の収益の安定性を高めつつ、繁忙月の恩恵を受けられます。

従来型不動産ビジネスに取って代わるというものではなく、共栄共存できるビジネスモデルを模索していくことで新しいことに親しみを持てる方も多いのではないかと思います。特に居住人口が減少しているエリアでは、今後空室問題がより深刻化していくことでしょう。だからこそ、潜在的な可能性を模索していくことが重要なのかと思います。

この記事が少しでも、不動産ビジネスの従事者様のお役に立てれば幸いです。

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文/編集:簡 孝充

空き区画活用LP

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