2021-06-10
レンタルスペース経営
FP・宅建ライターが考えるレンタルスペース事業者の確定申告と経費
space palette labo編集部
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って私たちの生活様式が大きく変化しました。リモートワークの普及に伴い、レンタルスペースの利用者が増え、物販やPRといったビジネスシーンでの利用も増えています。今後もレンタルスペースの需要は増していくものと考えられますが、レンタルスペースを運営するうえで忘れてはいけないのが「確定申告」の存在です。
今回の記事では、レンタルスペースを運営する場合の税金と経費についても考え方について解説いたします。
【目次】
レンタルスペース事業における所得の分類と課題
そもそも「所得」とは、「収入から経費と所得控除を差し引いた金額」のことを指します。レンタルスペース運営における所得は、主にスペースの利用者から得られる収益から経費(賃料や光熱費など)を差し引いた金額のことで、確定申告の対象です。
所得は事業内容や収入を得る手段によって、10種類に分類されます。レンタルスペース運営と聞くと、不動産所得に該当すると考える方が多いかもしれませんが、そうではありません。というのも、不動産所得に該当するのはそのスペースを占有できる賃貸借契約によるものであり、あくまで一時的に利用権を付与するレンタルスペース運営には当てはまりません。
レンタルスペース運営で得た所得は、「事業所得」か「雑所得」のいずれかに該当します。
【事業所得に該当するケース】
レンタルスペース運営を事業規模で行っており、そこで得られる収益だけで生計を立てられる場合。
【雑所得に該当するケース】
本業が別にあり、レンタルスペース運営を副業の位置づけで行っている場合。
必ずしもすべてのケースが上記に従って分類されるわけではありませんが、基本的には「事業所得」か「雑所得」のいずれかに区分されることがほとんどです。また、雑所得の場合は次の2点に気を付けなければなりません。
・ 赤字になっても雑所得以外の所得との損益通算はできない
・ 事業所得に認められる青色申告特別控除は適用されない
確定申告について、「所得が少ないから適当に申告しても指摘されない」「なんでもかんでも経費に含めて大丈夫」などといった話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。しかし、確定申告においてそうした誤りが発覚した場合、「税務調査」において多額の追微課税がなされるほか翌年の県民税および都民税で不利な扱いをされる恐れがあります。
また、場合によっては金融機関でローンが組めないこともあるでしょう。そのため、確定申告は嘘やごまかしをせずに正確な所得を申告しなければなりません。
経費計上ができる支出とできないもの
ここではレンタルスペース運営で生じる主な経費について、詳しく見ていきましょう。
レンタルスペースを借りる際、間を取り持ってくれた不動産業者に対して仲介手数料を支払う必要があります。借主が支払う仲介手数料は原則として賃料の半月分以内となりますが、これらは経費に会場可能です。(その他、オーナーに支払う礼金も経費に含まれる)
また、退去時に返金される敷金は経費とはならず、資産として計上することに注意しましょう。
確定申告書類作成のイメージ(写真:photoAC)
不動産の大家さんに対して、毎月支払う賃料は全額経費として計上可能です。
レンタルスペース運営においてマッチングサイトを利用している場合、そこで生じたシステム利用料(販売手数料)なども経費に該当します。
レンタルスペースを運営するために揃えた備品や消耗品(机や椅子、ホワイトボードやプロジェクターなど)も経費として計上できます。また、スペースの鍵の管理やセキュリティ、清掃などを外部業者に委託した場合も、そのお金は外注費として経費になるので忘れずに計上しましょう。
その他、レンタルスペースを売上をあげるために使った費用も経費として計上できるため、領収証を手元に残しておくようにしてください。
確定申告の方法について
レンタルスペースで得た所得に対する確定申告ですが、「青色申告」か「白色申告」のいずれかで行う必要があります。青色申告と白色申告の最大の違いは特別控除額の違いで、白色申告をした場合は控除の恩恵を受けることができません。青色申告の場合は、帳簿付けを「複式簿記」にすると最大で65万円、「簡易簿記」を選択すると10万円の特別控除を受けられます。
課税される所得から最大65万円が控除される「青色申告特別控除」の恩恵はとても大きく、確定申告の時はもちろんのこと、翌年の住民税や国民保険料も安くなるかもしれません。
青色申告を利用するためには、税務署への事前申請が必要なことに加え、正規の複式簿記による記帳等が必要となりますが、昨今では便利な確定申告ソフトもたくさんあるのでぜひチャレンジしてみてください。
先に述べたように、総収入金額から「経費」と「所得控除」を差し引いた金額が課税対象となりますが、その金額をいくらにするかによって税金の多寡が決します。課税される金額を少なくするには、必要経費の金額を漏れなく計上することはもちろん、利用できる控除を忘れずに受けるように心がけましょう。
なお、必要経費の考え方ですが、「費用項目ではなく何に使ったのか」と支出の目的を明確にしておくことが重要です。例えば、「交通費」を例にとるのであれば、出張のための新幹線代は経費になりますが、家族で休日に出かけたときの電車賃は経費となりません。
あくまでも、事業としての目的を果たすために使用したお金が費用になると考えるようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、レンタルスペース運営時の確定申告と費用の考え方について解説いたしました。レンタルスペース運営に限らず収益を得ている以上、基本的には「税務調査」のリスクを常に抱えているといっても過言ではありません。月々の支出について不明確なお金の動きが内容にチェックしておくことはもちろん、計画的に帳簿付け作業を進めていくようにしましょう。
この記事が少しでも参考になれれば幸いです。
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文:織瀬 ゆり
編集:簡 孝充
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