シェアリングエコノミーは今後も拡大するのか?ーアフターコロナの市場を予測ー

簡 孝充

様々なジャンルで拡大しつつあるシェアリングエコノミー。一方でこのような潮流が一過性のブームであるのかどうかという疑問を持たれる方も多いことかと思います。特に対面を推奨しないコロナ禍では、否定的な意見を見受ける機会も多かったように思えます。

この記事では、昨今の市場概況を加味し、アフターコロナの世の中においてシェアリングエコノミーの市場はどうなっていくのかを考察したいと思います。

昨今の市場概況

2020年は、あらゆる業態が新型コロナウィルス(COVID-19)による影響を受けてきました。(株)情報通信総合研究所の発表データによると、20年度市場規模は2兆1,004億円。予想を下回る結果となったようです。(※出典:シェアリングエコノミー関連調査 2020年度調査結果)

なお、ネガティブな影響を受けたサービスが多い一方で、ポジティブな影響を受けたサービスもありました。下の表は同社の昨年のニュース、独自のヒアリング調査等を経てspace palette laboがまとめたものになります。 

下記にて、詳細を解説していきます。

2020年度にネガティブな傾向があったサービスについて

マイナスとなった業態は外出、対面に関わる業態です。具体的なサービスとして、シェアハウスや民泊などが挙げられます。札幌市を中心にシェアハウスや民泊の運営を行なっている(株)MASSIVE SAPPOROの川村代表は昨年の状況を下記のように述べています。

三密回避・リモートワークが重要視されるようになり、人と人が接触しないことを推奨されてしまうようになりました。大袈裟かもしれませんが、それまでの正義が悪に転換されるようにすら思えてしまいます。私が運営しているシェアハウスでは常に推奨してきた人同士の交流も、「控えてください」というアナウンスを発する他なく、パーティーやイベントの開催も出来ません。3密回避が謳われる世の中で、シェアハウスは危険性を伴う施設の代表格と解釈されてしまうことすらあります。

引用元:コロナ渦だからこそ考えたいシェアリングエコノミーの本質。対面からリモート転換がもたらしたもの

その代償としてシェアハウス事業が大きな影響を受けたことは言うまでもありません。また、場所をシェアするサービスの代表格とも言える民泊事業もコロナ禍に大きな影響を受けた産業の一つです。インバウンド観光客は

2020年度にプラスとなった業態

一方で、オンラインで完結ができたり外出が回避できるようなサービスはプラスの影響があったようです。

非対面が推奨される中で利用者が増えたサービスもあります。uber eatsをはじめとしたフードデリバリー系のサービスが日本で本格的に流行したのは昨年のことです。その影響もあり、首都圏の外食産業を中心に「ゴーストレストラン」という新しい言葉も普及しました。ちなみに、ゴーストレストランとは、店舗で接客を行わず、食品の生産を行い、テイクアウトや宅配のみで収益を上げている業態のことを言います。対面を回避しなければならない

宅配サービスは自社で商品の配送を行えるリソースを保有している企業のみが参入できるものでしたが、配送業務を外部に委託ができるようになったことで様々なレストラン業態が参入していくようになりました。

外食産業が大きく休業を余儀なくされる一方で、ゴーストレストランのような業態が台頭してきました。また、リモートワークが推奨されるようになり、クラウドソーシング等のサービスを通じて副業にトライする方も増えたようです。

アフターコロナの兆しについて

2021年に入っても、あらゆる産業において新型コロナウィルスの影響によるマイナス成長は続いています。(2021年6月の段階で国内主要10都道府県で緊急事態宣言が発令中。)ただし、ワクチンの摂取も進み2020年と状況は大きく変わりつつあります。シェアリングエコノミー市場においても少しずつ、明るい兆しが見えてきたように思えます。

airbnbの決算発表について

2020年度には大規模なリストラを余儀なくされた民泊プラットフォームの最王手、airbnbの決算はとても前向きなものだったようです。

民泊仲介大手の米エアビーアンドビーが13日に発表した2021年1~3月期決算は、売上高が前年同期比5%増の8億8693万ドル(約970億円)だった。米国や欧州で新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだことが追い風になり、4四半期ぶりに増収を確保した。

引用元:『 Airbnbの1~3月、4四半期ぶり増収 旅行需要が回復』日経新聞

スペースシェアリング業界は、民泊とそれ以外という分類がされているものです。言うまでもなく、airbnbが上記のような決算発表をされた影響は大きいものです。

一方で、同社は旅行における変化についても言及しています。

近場への旅行の需要が増えるでしょう。Airbnbが行った調査では、56%の人々が国内もしくは地域内の旅行を希望しています。より離れた場所や海外旅行を希望する人々はわずか21%に留まっています。

引用元:『CEOブライアン・チェスキーが語る旅行動向とAirbnbの新しいホストキャンペーンのご紹介』airbnb

2021年7月現在においても、海外に渡航には不自由があるものです。コロナ渦において、より身近な場所に訪れるようになったというのは至極当然の流れにも思えます。このような流れは世界各国で起こっており、米国のみならず日本においても同様のことが言えるものではないでしょうか。

マイクロツーリズムニーズの高まり

2020年度以降に旅行やビジネスで海外に訪問する機会は激減したはずです。人々がより身近な場所に目を向けるようになったことは前述の通りです。このような流れをマイクロツーリズムと呼びます。

マイクロツーリズムとは、自宅からおよそ1時間圏内の地元や近隣への短距離観光のこと。新型コロナウイルスによって打撃を受けた観光業界を救う手段の一つとして、株式会社星野リゾートの代表 星野佳路氏が提唱した。

引用元:『マイクロツーリズムとは・意味』IDEAS FOR GOOD

改めて考えると、私自身コロナがはじまってから1度も飛行機に乗っていないですが、自宅から1時間圏内の距離に足を運ぶ機会が増えた気がします。例えば、小樽、函館、ニセコといった北海道が誇る観光都市にはコロナ以前に訪れる機会やモチベーションもほとんどなかったように思えます。コロナを機に、地元の人が自分の足元に案外とても良い場所があったということに気がつく。

灯台下暗しという言葉もありますが、地元圏内の魅力というのはそういうものであるはずです。先ほどのairbnbの発表にもありましたが、まさに世界中でそういった現象が起きているのではないでしょうか。

アウトドアニーズの高まり

3密回避という言葉はコロナ渦に誰もが意識するようになりました。過去の記事でも触れさせていただきましたが、密室を回避する流れと共にアウトドア市場は加速していったようです。予約が取れないほどに人が多いキャンプ場は若干、本末転倒に思えてしまう気もしますがBBQやキャンプといったアウトドアへのニーズは高まり続け、デザインや商品開発の視点でももはや定番化しているようにも思えます。

当社のパートナーである(株)MASSIVE SAPPOROの川村代表は、むしろ、新型コロナが追い風となりアウトドア需要はもはやメガトレンドマーケットであるとすら言われています。

当社の民泊物件においても中心部の施設はガラガラ状態だったのにも関わらず、郊外の物件は、連日大盛況となりました。石狩市厚田や小樽市朝里のログハウス物件は、8月はほぼ100%稼働だったことには驚かされました。

引用元:コロナ渦に加速したアウトドアブーム。一過性のトレンドではない兆し感じた出来事

経済活動が抑制され様々な業態が苦戦している一方で、完全に経済が止まってしまうことはありません。そして、シェアリングエコノミーという市場においても、新型コロナのネガティブな影響を受けた業態がありながらも、むしろポジティブな追い風を受けている業態も少なからずあるものではないでしょうか。

まとめと考察

現段階(2021年7月)において、新型コロナウィルスがいつ収束するのかを断言することは不可能です。ただし、昨年とは状況が大きく異なり明るい兆しもあり、beforeコロナと比較し消費行動は確実に変化したようです。

先にも触れさせて頂いたように、今後はあらゆる業態で対面と非対面によるハイブリットな業務推進がますます進み、マイクロツーリズムやアウトドアへのニーズがさらに高まっていくということは誰もが疑わない事実です。

地方住民である我々にとって必要なことは、まず自分の足元を見直していくことにあると思います。抽象的なまとめととなってしまいましたが、この記事が少しでも地方在住のビジネスマンの方の希望となれれば幸いです。

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文/編集:簡 孝充

空き区画活用LP

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