レンタルスペース運営代行会社の業務領域ーオペレーション効率と収益バランスを考察ー

簡 孝充

『運営代行会社の業務ってどんな内容なの?お願いした方が良いの?』という疑問を持たれた方も少なくはないはずです。特に、従来型の不動産ビジネスに従事されている方にとっては聞きなれない言葉かもしれません。

この記事では、レンタルスペース事業では度々耳にする運営代行会社の業務領域と依頼するメリットやデメリットについて解説をさせて頂きます。

運営代行会社の役割と業務領域

まず知っておいて頂きたいのがレンタルスペースの運営代行業は何をやっていて、どの程度の料金がかかるものなのか?ということです。詳細は会社により異なりますため、ざっくりと概算で書かせて頂きます。

レンタルスペース運営のオペレーション概要

レンタルスペース事業の運営業務は多岐に渡ります。利用者の問い合わせや決済をはじめ、様々な業務においてインターネットの活用が基本になり、対面を基本とする方にとっては馴染みにくいものかもしれません。運営代行会社の具体的な作業は下記の通りになります。

・利用者の問い合わせ管理

・利用ガイドライン(マニュアル)の作成

・プライスの適正管理

・リスティング(掲載ページ)の作成

・チェックイン案内

・利用者への設備案内

・清掃管理

…etc

厳密に言えば、物件によりもっと細かい業務もありますが、大まかには上記のような業務内容になります。作業はデジタルツールやネット経由の作業が多いため、従来の不動産業に馴染んでいる方は苦手意識を持たれる方が多いのも事実です。

運営代行の役割

厳密には異なりますが、レンタルスペース業の運営代行会社の役割は従来型不動産業でいうPM(プロパティマネジメント)業に当たります。つまり、管理業ということです。運営オペレーションの手法がインターネット中心となり、業務内容も少々異なりますが、物件の稼働率を上げて、収益性を高めていくことが運営代行の役割となる訳です。

不動産管理会社が運営代行の役割を担っている場合もありますが、レンタルスペースの代行業は通常の宅建業ではないことや得意な領域が異なるために、不動産管理業事者が行っていないケースも多いです。物件の用途や契約内容にもよりますが、レンタルスペースの管理に特別な国家資格等は必要がないものです。仮にレンタルスペースの利用契約ではなく、賃貸借契約や定期借家契約といった不動産契約を締結する場合には宅建士の資格が必要になりますが、レンタルスペースの契約はそれらには該当しません。

ビジネス目的で利用がされるスペースに関しては、資格がなくても代行管理業ができるものと考えられています。

運営代行の料金体系

運営代行会社によっても異なりますが、初期費用として数万円程度。月額の支払いは売上の10%?20%を徴収する成果報酬式で契約をしているケースが多いものです。例えば、10万円の売り上げが上がった際には1?2万円が運営代行会社のFeeとなります。それ以外に清掃料金や消耗備品等のコストが発生していくものになります。

運営全体の収支をざっくりとした算数で表すと下記のようになります。

売上ー(家賃+光熱費+消耗備品)ー(媒体掲載料25%?35%)ー(運営代行Fee+清掃料金)=利益

上記の算数式に基づいてシミュレーションしてみましょう。※売上はあくまで仮定の話です!

  • 売上:15万円
  • 家賃:5万円
  • 光熱費:1万円
  • 消耗備品:5千円
  • 媒体掲載料金(30%):4.5万円
  • 運営代行Fee(10%):1.5万円
  • 経費合計:12.5万円
  • 利益:2.5万円

実際の数字を見てどのように感じられるでしょうか?上記の仮説に従って、何もしなくても15%程度の利益が確保できるのであれば決して低い利回りではありません。ただし、レンタルスペースはテナントの流動性が高く、収益の安定性が低いビジネスモデルです。常に賃料の3倍以上が売上がるわけではないことは念頭に入れておくべきかと思います。

運営代行会社に依頼するメリットとデメリット

ここまでに、レンタルスペース運営代行会社の役割と主な料金体系について見てきました。上記を踏まえて運営代行会社を活用するメリットとデメリトについて考察していきたいと思います。

メリットについて

運営代行会社に依頼するメリットとしては、オペレーションの手間が省けるということです。仮に1室を1日単位で貸し、100%の稼働率で運営する場合を想定すると、1部屋につき最低でも365回(人)の問合せに受け答えすることになります。(勿論、どんなに人気でも100%の稼働率なんて中々ないものですが…)利用者はスペースに不慣れであるため、利用中の問い合わせなども多いことでしょう。

一方で、従来型の不動産ビジネスは1年単位で物件を貸し出すため、それほど多くの問い合わせ量になるわけではありません。この業務量が膨大なため、運営代行会社に依頼される方が多いと思います。

コールセンタースタッフのイメージコールセンターのイメージ(写真:photoAC)

運営代行は大半の場合、オペレーターが常駐しています。スピーディーに問合せに応答ができる体制で、コールセンターのようなものをイメージするとわかりやすいです。

レンタルスペースの利用者は概して、急いでいることが多いため返信のスピードが早いことが、成約率を高めるコツでもあります。これらの業務を加味して、自社でオペレーターを雇う代替え考えられる事業者が多いようです。

また、高い稼働率を維持していくためには様々なプラットフォームに掲載していく必要があります。その点においても代行管理会社のリソースは優れています。複数のプラットフォームに登録しつつ、ダブルブッキングが起こらないように独自のスケジュール管理システムがあったり、定型のメッセージを機械化できる仕組みがあったりなど、テクノロジー面においても効率的な接客ができる体制を整えていたりします。

デメリットについて

次に考えたいのは逆の側面、つまりデメリットです。大きな点は、自社の利益が減るというです。前述の算数計算式でも説明いたしましたが、最低でも10%程度の代行Feeが発生し、減益に直結してしまうということです。

自社(自分)で保有している不動産で運営するのか、賃料を払いながら運営するのかによっても捉え方が変わってくるものかと思いますが、運営代行会社を介在させることで、利益が出にくい体質となることは予め認識しておくべきことです。

まとめと考察

今回はオペレーション効率化と収益の観点から運営代行業を解説をさせて頂きました。勿論、メリット・デメリットの捉え方は人によって異なるものでしょう。

お伝えしたい点は、収支のバランスを考慮してからオペレーション方法を決めた方が良いということです。仮の場合だとしても数値をシミュレーションし、自社にあったスタイルを検討して頂くことをお勧めします。

この記事が少しでもスペース貸し事業者の方のお役に立てれば幸いです。

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文・編集:簡 孝充

空き区画活用

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