弁護士と考えるレンタルスペース運営に関する法律ー#02.不動産契約についてー

space palette labo編集部

レンタルスペース運営は従来型不動産ビジネスと比較すると新しい概念になります。そのため、法の解釈で迷われる方も多いはずです。そこで、これらにまつわる法律について現役の弁護士に相談を行い、全3回にわたってご紹介していきます。今回は不動産契約についてです。

レンタルスペース事業者の方も従来型不動産ビジネスに従事されている方も、ぜひご一読ください。

レンタルスペース事業者と利用者との契約

Q.不動産契約の種類

お客様(利用者)とレンタルスペースの事業者の間の契約についてです。レンタルスペースと一概に言っても、賃貸借契約を結ぶべき場合もあれば、定期借家契約で管理すべき場合もあるかと思います。また、一方でコーワーキングスペースのように不特定多数で場所をシェアするような使い方もあり、その場合は一定の期間のみ場所を利用できる権利を付与しているとのみと考えられていたりします。レンタルスペースの運営目的にもよるかと思いますが、どんなシーンでどのような用途の場合にどんな契約が適しているものかという点を深掘りしていきたいと思います。

ー普通賃貸借契約、定期借家契約、催事契約など様々な種類の契約があるかと思いますが、 どんなシーンでどのような契約を締結するのが適切なのでしょうか?

簗田:まず1点、催事契約という概念は正式な法律としては存在しないものになります。借地借家法上、賃貸借契約なのか定期借家なのかと言う点は、契約期間終了後に必ず出て行ってもらうのか、それともその場所を借り続ける権利を有するのか…つまり「契約更新」が前提であるか否かの違いになります。

わかりやすく考えると、中長期的に継続してスペースを利用される予定があるのであれば賃貸借契約。そして、事業者側が一定期間後には必ず出て行ってもらいたいという意向がある場合は定期借家契約で締結すべきものであると考えられます。また、借りた人が排他的に場所を占有するのか否かによって、賃貸借契約を締結すべきかどうかは変わってきます。ここで言う排他的とは、借りた人が別の人に対して『この場所に勝手に入るな!』と言える権利を有するか否かで賃貸借契約を結ぶべきか否かを判断すべきだと思われます。

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インタビューに答える簗田真也弁護士(写真:桜木 淳之介)

レンタルスペース事業については、それほど世の中に周知されているわけでもないので、正直言って明確な裁判例はあまりないものになります。民法で定められている典型契約の分類とは異なる契約の種類になります。わかりやすく言うと、中長期的に継続的にスペースを利用される予定があるのであれば、賃貸借契約が適しています。また、運営側やオーナーが契約期間終了後は必ず出て行ってもらいたいという要望があるのであれば定期借家契約というように考えると良いかと思います。

それ以外のケースには催事契約(レンタルスペース利用契約)、つまり「場所を一時的に提供するよ」という内容の契約を結ぶと良いかと思います。

レンタルスペースは基本的に、一時的にその場所を利用することを許諾しますよという契約になるので、原則的には「レンタルスペース利用権契約」をベースに考えて、そこから中長期間、反復継続して使われるようであれば前述のように賃貸借や定借で考えて良いのではないかと思います。

Q.シェア型スペースにおける契約

ーなるほど。それでは、コーワーキングスペースのように不特定多数で場所を利用している場合は一人が占有しているものではない場合には普通賃貸借でも定期借家でもなく利用権契約を継続的に続けていくことで良いものでしょうか?

簗田:シェアオフィスに関しては基本的に賃貸借契約に当たるものなのかと思います。何故なら、シェアオフィスは自分が使いたい時に使えるという形態であり、同じスペースに他の事業者さんもいるだけですから。その場合は場所の一時的利用というよりは、シェアはしているけれども中長期的に継続して自分が使えるという権利になりますから、実質は賃貸借契約に近いものかと思います。

シェアオフィスの中でも時間貸しであれば、レンタルスペース利用権契約に近いのではないかとは思います。例えば半年間シェアオフィスを使う権利となると実質的に賃貸借契約と考えて良いものです。

この点も明確な基準が法律や裁判例で存在するのかと言われると、そうではないです。どのようにスペースを利用させるかによって解釈がかなり違ってきます。例えば、シェアオフィスと言えども、会議室を好きに使って良いという場合と、個室を好きに使って良いという場合。単なるパーテーションで区切られているだけなのか、鍵が付いているのか…という観点でも解釈のされ方が違うものです。

ですので、建物の構造やスペースを利用する内容、提供するスペースの物理的構造によっても賃貸借契約が適しているのかどうかも違うものです。

ースペースの用途だけではなくて、建物の構造、つまり個室なのか共有なのか。という点でも締結すべき契約の種類は異なるということですね?

そうですね。賃貸借契約に当たる場合は借地借家法という法律が適応され、適切な契約を結んでいない場合だと、「退去してください」とは言えなくなってしまう可能性もあります。勿論、お金を払ってくれなければ退去を促すことはできますが、場所を提供できませんとなった場合は賃貸借契約の場合は基本的に使わせなければならない。いつでも利用ができる権利になりますから。

そのため、賃貸借契約であるか否かという点はスペース提供者側としても非常に大切になってくると思います。

Q.レンタルスペース利用契約における注意点

ー例えば1週間単位とか半年とかそれくらいの期間をレンタルスペース利用契約だけで済ませていると利用者が「退去(退店)したくないよ!」と言える権利も発生してしまうということですか?

簗田:そうですね。ですので、スペース提供者側としては、賃貸借契約に当たらないような提供の仕方を検討した上で規約にも定めていく必要が出てくるかと思います。勿論使い続けてもらいたいのであれば、賃貸借契約で貸しても良いかとは思います。ただし、曖昧にしてしまうことは危険だと思います。ビジネスモデルの性質上、それほど紛争の事例もないかとは思いますが、賃貸借契約であるのかどうかは予め明確にしておく必要があります。

物件の所有者とレンタルスペース事業者との契約

Q.転貸借について

場所を借りているスペース提供者の方からよく「レンタルスペース事業って転貸借に当たるものか?」ということを相談されます。転貸借とみなされる場合は物件所有者への許可が必要になるからです。では、法律上の定義としてどこからどこまでが転貸借とみなされるものなのかという点について明確にして行きたいと思います。

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インタビューに答える簗田 真也弁護士(写真:桜木 淳之介)

ー転貸借と判断される場合は、期間によって定められるものなのか、場所で定められるものなのか…どのような観点で考えるべきなのでしょうか?

簗田:この点に明確な基準が存在するわけではないのですが、利用者が排他的に場所を占有している場合には転貸借と判断されるものかと思います。ですので、物件のオーナーやスペース提供者側が立ち入ることができないような利用の仕方である場合は転貸借にあたります。勿論、建物の物理的な構造ですとか期間なども関係してきます。例えば、5分の場合は賃貸借契約と言えるのかというとそうではないかと思いますが、丸一日に渡ってスペース提供者もオーナーも一切立ち入ることができない状況であれば排他的に使用されているとみなされると思います。そういった場合は転貸借に可能性が出てきます。

あとは、レンタルスペースに限っては鍵の管理は誰が行なっているのかも重要な判断材料になります。提供スペースの鍵を一定期間中、利用者のみが保持や管理をしている場合には他の人たちが入ってこれないので、その場合は排他的な利用と見られる場合があります。

よくあるデジタル暗唱キーやキーボックス管理で共有されている場合は、スペース提供者やオーナーも立ち入ることができるので排他的な利用とはみなされないかと思います。そのため、個室があってそこの鍵はスペースの利用者しか入れない状況が継続的になるのであれば賃貸(転貸)であると言えるかと思います。

ーなるほど。例えば、民泊のようなケースの場合は先ほどのお話に該当するので転貸になるかと思いますが、催事やポップアップストアのようなシーンでスペースを利用される場合には排他的とはみなされないと考えて良いものなのでしょうか?

簗田:そう思いますね。住居だと明確に転貸借と判断されやすいですが、ビジネス利用の場合ですと一時的な利用に過ぎない場合が多いと思います。そのため転貸には当たらないと解釈づけることができます。

この点は判断が難しいかと思います。例えばですが、借りている住居の場合は大家さんといえども、勝手に部屋に入ってはいけないものですよね?その基準で賃貸借か否かを判断していくというのもわかりやすいかと思います。

Q.無許可で転貸借を行なった場合

ー本来は転貸借の許可が必要なのにオーナーの許可を取らずにレンタルスペース運営を行なった場合、どのような処罰が考えられますか?

簗田:転貸借の禁止条項は契約の際にほとんど全ての物件の条項に記載されている内容かと思いますので、許可を取らずに第3者に転貸借をしてしまった場合は損害賠償請求等を受ける場合があります。勿論、許可を受けなかった場合スペースを利用する人も継続的に利用ができなくなる可能性もあります。そういった場合にはスペース利用者から損害賠償請求を受ける場合もあるかと思います。

ーつまり無許可で転貸借を行なった場合はオーナー側と利用者側の双方から訴訟を受けてしまうリスクがあると?

簗田:そうですね。紛争、裁判に発展するリスクはあります。勿論、自社(自己)物件であれば問題ないものかと思いますが、多くの物件は賃貸借や定借で運営をしているかと思います。仮にオーナーと運営者側の契約内容が賃貸借に当たらないとしても利用目的は記載したり告知することになるかと思います。例えば、事務所や店舗として借りるのか等の記載をです。

実際にレンタルスペースを運用するとなると、不特定多数の方がスペースを利用されるかと思います。その場合に『あなたが事務所として使うと思ったから貸してあげたのに、不特定多数の人が使うのは契約違反だ!」とオーナー側に主張されてしまう可能性も出てきます。利用者と運営者の契約が賃貸借契約にあたらない場合であってもオーナー側からすると使用目的違反、正確に言うと善管注意義務違反と判断される恐れもあり、契約そのものを解除されてしまうリスクも出てきます。

そのため、転貸借に当たるのかどうかの以前にオーナーから許可ないし、利用目的を予め詰めておくことは絶対必要なことです。

まとめと考察

今回のインタビューでは、レンタルスペースの事業者側が利用者と円滑に取引をしていくために必要不可欠な内容であると言えます。そのため、まとめとして注意すべき点を下記にまとめさせていただきます。

レンタルスペース事業者と利用者の契約

多くのレンタルスペース事業者は「レンタルスペース利用契約」を締結し、利用者と取引をしている。レンタルスペース利用契約の場合、法律上は宅建免許が必要ないため、宅建士が立ち会いのもと重要事項説明等を行わないケースが多いことも考えられる。だからこそ、契約締結時に明確に伝えておく必要がある。

利用規約や締結した契約が曖昧であり、長期にわたって利用がされた場合には利用者がそのスペースを利用し続ける権利を主張されてしまう可能性もある。これらのリスクを十分に加味して利用者との契約を締結すべきである。

物件の所有者とレンタルスペース事業者の契約

商用で利用される場合、レンタルスペース運営と利用者との間で転貸借が発生していないと思われる。民泊施設のように利用者が排他的にスペースを占有している場合は転貸借と解釈されるものであるが、ポップアップストアや催事目的で一定の時間だけ場所を利用している場合はそれに当たらない。

ただし転貸借であるか否かに関わらず、物件オーナーに対して事前に用途を伝えておくことは義務であり、これらを怠ってしまった場合は利用者と物件所有者の双方から訴えられてしまう可能性が出てくる。場所を借りてレンタルスペースを運営する場合には事前に用途を伝えておく必要がある。

今回の記事が、レンタルスペース事業者の方のお役に立てれば幸いです。

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簗田 真也

(保有資格:弁護士、司法書士、行政書士、相続知財鑑定士)

平成21年、北星学園大学経済学部在学中に司法書士試験に合格し、その翌年に、司法書士事務所を共同設立。平成24年には行政書士試験に合格し、其の翌年行政書士法人を設立する。平成27年には司法試験に合格し、翌年やなだ総合法律事務所を開所。企業分野ではスタートアップ・ベンチャー法務、不動産法務、ビジネス法務をはじめとし中小企業法務全般の法務に携わる。

インタビューアー:簡 孝充

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