【clubhouse討論会#01 】地方創生のジレンマ「よそ者」と「当事者の垣根をどう越えていくか」 函館⇄札幌間で議論

space palette labo編集部

space paletteではclubhouseを通じて討論会を開催しています。本ブログに寄稿を頂いている方をゲストに招き、執筆頂いたテーマを元に議論をしています。第1回目は、合同会社 箱バル不動産 代表 蒲生寛之さんをお招きし、モデレーターからの質問を交えて議論させて頂きました。

テーマは 地方創生のジレンマ「よそ者」と「当事者」の垣根について

期待を胸にしたUターン就業者が陥りやすい問題に焦点を当てた内容です。ご自身の経験を中心に語って頂きました。Uターン就業をされたばかりの方には、ぜひ一度読んで頂きたい内容です。

引用元:論文「よそ者」に夜地域づくりの特徴と課題について 柳井雅也

Q1.U ターン就業前後で仕事のギャップはありましたか? また、それはどんなことですか?

ー蒲生さんはUターン就業者ですよね?

蒲生:そうですね。U ターンしてから 8 年が経ちました。既に「よそ者」と言えるのかわかりませんが、当時はピカピカの「よそ者」でした。

ー蒲生さんは現在函館に住まれていますが、その前は色んな土地に住まれていたみたいですね?

蒲生:20 歳くらいの時にオーストラリアに渡って、1 年数ヶ月をオーストラリアを中心に海外で過ごして、その後、東京に住んでいました。30 歳くらいの時に函館に帰ってきましたが、それが 8 年前です。

ー当時、U ターン就業をされて「想定と違うな…」という事はありました?

蒲生:勿論ありました。皆、希望に満ち溢れて帰って来るんですよ。(だからギャップも大きい)。

移住をされる方は何らかのポジティブな想いがあって、その土地に行くと思います。 僕の場合は、東京でいくつかの職業を経験をして、函館で不動産会社に務めたのですが、「もっと便利なモノがあるのに…こっちの方がもっと効率が良いんじゃないか…」という気持ちが、前面に出てしまっていました。ただ、それは職場で求められていない事だと、生意気に感じられてしまうものです。そんな感じでUターン当初は、あまり上手く行かなかった経験があります。

ー良くわかります。Uターン就業直後は、そういう経験する人は多いでしょうね。

蒲生:「自分が役に立ちたい」という気持ちだけが先行して、答えが手元にあるのに、手を出すと何故か失敗するという…(笑)。 こんな経験は自分だけではないはずだと思って、他の移住者とお話しをすると、少なからず似たような経験をしている人たちはいました。

全国Uターン移住実態調査:電通

Uターン移住前、直後で生活の満足度は低下する傾向がある。引用元:電通「全国Uターン移住実態調査」

Q2.現在の居住地に馴染んでいく際に、どんな苦労をされましたか?

蒲生:僕の場合は地域との繋がりがゼロではない立場でした。地元には友人や家族がいたので。ただし、帰郷して、新しい人間関係を作ろうとした際に、先ほどのような失敗経験もあり、なるべく「一度飲み込むようにしよう」、「ここはそういう世界なんだ」と考えて、人と接するように心がけました。

ただ、それだけだと心が貧しくなって来るので、何気ない会話ができる人が一人でもいる事が重要だと思います。 現在は仕事で、移住サポートもしているのですが、私も話を聞いてあげられる立場になれるように心がけています。

Q3.居住地をより良くしていくために、コンサルや町おこし協力隊は必要だと思いますか?

蒲生:結論から言えば、無くても良いと思っています。一括りにコンサルや地域おこしというと弊害があるでしょうけど、上手に活用できていれば上手くいくはずです。 場合によっては、コンサル・地域おこし協力隊は招かざるものになってしまう可能性はあると思います。

当時、U ターンしたての僕みたいに…。

地域の中の人たちが変わらなければ持続的な活動にならないので、「よそ者」が中心になって引っ張っていく事よりは、その土地に住んでいる人が変わるきっかけを作れる人がコンサルや協力隊として来てくれることが良いのかと思います。

ー僕は双方のマッチング精度が大事だと思います。 地域住民が単純に自分たちの仕事を楽にしたいだけの場合は、上手く機能しないと思います。蒲生さんはどう思われますか?

蒲生:自治体、行政が一般的にコンサルに仕事の依頼しますよね? 「地域住民は何に困っている」とか、「この地域にはどんな問題がある」という事をよそ者が理解していないケースが結構あります。

「よそ者」は「当事者」に寄り添って、実際に何がどうなっているのかを見ることで、ミスマッチは防げることかと思います。まず第一に、「(よそ者が地域の人たちと)どう関わっていくべきか?」という点は議論が必要なのかと思います。

Q4.「よそ者」と「当事者」の垣根を越えるために、どんな取り組みが必要だと思いますか?

蒲生:両方とも歩み寄って、理解し合う必要があると思います。 外から中に入ってくる人たちは、「地域の人たちはそういうモノなんだ…」というのを一旦飲み込んで、まずは対話をしていくことがすごく大事だと思います。

一方で地域の人たちも、(よそ者を)受け入れる度量を持って欲しいと思っています。外で勉強してきたことは武器になる気がしますし、 歩み寄りの姿勢をお互いに持つことが必要だと思います。できるだけ対組織というより、一対一の対話する場面を自分から作るようにするのは有効な気がします。

ー例えば飲みにいくとか?

蒲生:はい。様子を見て店主に話しかけてみるとか。「自分はこういうことをやりたいと思うんだ!」と自分が思っていることをしっかりと話してみると、割と力になってくれる人は少なくないと思います。

すんなりコミュニティの中に入って行ったり、数珠つなぎで会いたい人にどんどん会ってコトが進むというのを見ることもあります。 逆に「なんか困ってるんでしょ?」「困っている人を助けに来ましたよ」というスタンスで行くと危険だと思います。

この街が好きで、「あなたと一緒にこんなコトがやりたい」という姿勢で臨めば、人を紹介してもらえたり、お店をやりたいと言えば「什器が余ってるから使う?」みたいに声をかけられて、頂いた物だけで済んでしまった人も周りにいます。

中には車まで、貰ってしまう人もいたり(笑)。

ーそこは人付き合いの上手さ、下手さみたいなのもありますよね。可愛がられるセンスがある人は特ですね。

蒲生:「困ってるので助けにきてやったぜ!」みたいなスタンスじゃなければ、大抵は大丈夫だと思いますけどね(笑)。

【後半】聴衆者を交えての座談会

(聴衆者)SNP さん:

僕は東京で広告をやっている人間です。割と「よそ者」なので興味があって聞いていました。 普段はブランディングからクリエィティブまでを行う仕事をやっています。 地方にお客様がいて、EC や施設を作るので「どうやって(お客)を呼ぼう?」みたいな仕事から入って、外から呼ぶのか、どうやってコミュニティの中で発展していくのをインストールするのかなどを喧々諤々としながらやっています。

ーやっぱり、よそ者が行くことで生まれてしまうジレンマみたいな物はありますか?

SNP:東京のクリエイティブの肩書きだと重宝されることがあります。要するに「自分ごと」にしてもらえないというか。結局、実施すると意外と効果が出ないみたいな...。そういう解離が生まれがちなこともあって…。そこがこのテーマに密に絡んでいると思いながら聴いていました。

ー僕も、もともと東京にいたのでわかります。当事者の方は、肩書きに過度に期待する傾向があるものかと。

SNP:プロジェクトは共通の目標を設定しないと、後々になって大火事になるようなことが多い気がします。

ーSNPさんは東京で仕事しているんですよね?差し支えのない範囲でお仕事の内容ってお伺いしても良いですか?

SNP:東京なのですが、北陸や全然違う地方の仕事をさせて頂いています。今は宿泊を伴う健康の施設の立ち上げに参加して、観光のハブになるような施設を作っています。 地元の大きい企業が地方創生を兼ねつつ、地元に新しい雇用が生まれるようにやっています。前の代理店さんはハイカラな横文字ばかりでやっていて、地元の人が着いていけなかったようです。

一旦まっさらにして、「本当にやりたかったことは?」「地元でオペレーションしながら築いていける世界観はなんだろう?」という事に立ち戻りました。

要するに、よそ者ではなく当事者たちが考えるスタイルに助太刀していくスタイルに変えました。

そうすると「自分たちで何ができるのだろう?」と当事者たちかにしっかり考えて頂けるようになりました。

ー当事者から聞いていた課題や与件を改めて現場で確認してみると、「そこが課題じゃないんじゃないか?」みたいなことって多いですよね?

SNP:クライアントの求めるものが当初の宿題と違う事は結構あると思います。これは私の友人が手がけた一例になるのですが、地方の漁協さんが ECをやりたいというのですが、撮影から流通までのソリューションを納品した事例もありました。完全内政化と言うか。売り先までを作って、よそ者が当事者を育て上げた例です。100 万円でサイトを作るのではなく、半年でここまで育てあげますみたいな感じが良いのかなと思います。

ーそれは素晴らしいですね。

SNP :そうすることで、地方創生って胡散臭さがなくなるワードになるかと思います。

ーおっしゃること、とてもわかります(笑)。「地方創生」じゃなくて、なんて言う言葉が良いですかね…。前にも蒲生さんとこんな話題になったことありましたよね?

蒲生:うん。日常の足腰が強くなるという意味じゃないと「地方創生」や「まちづくり」って言いたくない派です(笑)

SNP:わかります。ブランディングっていう言葉もドキドキしますよね(笑)。

ーブランデイングとマーケティングという言葉は既にコモディティ化してて、「それって正しい解釈なんだろうか?」と感じてしまうことが多々ありますよね。

今回の討論会のまとめ

ー初回でしたが、色々と学場せて頂く機会になりました。よそ者と当事者の垣根という問題ですが、改めて蒲生さんのご意見をお聞かせください。

蒲生:SNP さんも言ってましたが、よそ者は重宝してもらうのではなくて、「自分がどれだけ当事者になれるのか?」というマインドシフトが無いと、変われないのかと改めて感じました。

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※こちらの討論会は音声型 SNS clubhouse「ローカルの未来を語ろう」にて不定期で実施しております。

【関連投稿】

既にブームは過ぎ去ったのか? 地方在住の私が感じているClubhouseの可能性

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モデレーター:簡 孝充

文:半田 拓馬

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