アンティークな倉庫を活用したイベント制作事例-50’sカルチャーが交錯する複合ポップアップストア-

space palette labo編集部

2022年7月3日(日)に理容室Apacheが、函館市内の倉庫でイベントを実施した。同店は、道内外に顧客を抱える有名店だ。エルビス・プレスリーを彷彿させるポマードを使ったスタイリングを得意とし、50’sカルチャーに影響を受けているBarbarだ。今回のイベントでは『RIDE WITH APACHE』と題し、アメカジやバイカーグッズ等の様々なショップがポップアップ形式で出店をした。結果として普段はあまり人通りのない倉庫に総勢で200名以上の客が押し寄せた。

自社でイベントやポップアップストアを企画運営されている事業者には模倣となることも非常に多いことだろう。本投稿では、理容室Apacheに行ったインタビューを元にイベント企画、制作の模範として参考にしてもらいたい。

お店の遠方でイベント(RIDE WITH APACHE)を開催する意図について

ー本拠地から遠方に出向いてイベントを開催する意図は?

Apache:床屋というものが基本的にお客様に来て頂いてサービスを提供する業態です。だからこそ、来て頂いてばかりではなく、僕らが足を運んでお客様のもとに恩返に行こうと考えました。

元々、僕らはバイクや自転車に親しんで来たので、僕らのカルチャーも知ってもらえる機会かと思いました。新型コロナの影響もありましたが、日常に少しでも変化があることは良いリフレッシュと刺激になります。お客様との会話のネタにもなりますからね。

ー道中の映像撮影も目的の一つか?

Apache:そうですね。Apacheをご存知ないお客様は僕らが普段どんなところで、仕事をしているのかもわからないかと思います。旅を通じて北海道内の風景を映像でお届けしたいという別の目的あります。

遠方に出向くことは、オーナー(川上氏)が過去から作ってきたカルチャーがあって、その繋がりを若い世代が受け継いでいます。遡ると、ゼロミーティングというバイクミーティングをオーナーが主宰していて、仲間とツーリングに行って楽しんできました。RIDE WITH APACHEのように遠方に出向くことは、Apacheには過去から繋がっているカルチャーなんです。

バイカーを見送るApacheスタッフ

ーイベントを開催される際に、会場選びの基準は?

Apache:会場選びは雰囲気を重視しました。今回は映画のワンシーンにありそうな雰囲気がとても良いと感じました。今回は函館という土地ならではというか、海外にいるような風景ですよね。

ーイベント開催時の会場選びの基準は?

Apache: イベントに行くからには、会場に来られるまでのドライブやツーリングの時間も楽しんでもらうこともイベントの一部です。だからこそ、アクセスの良さというよりは、『雰囲気の良さ』とか、『良い距離走ったなぁ…』とかそういう感覚を楽しんでも頂きたいと考えています。

札幌や東京でイベントを実施する際には、もっと立地条件を重視するかと思いますが、こういう楽しみ方は北海道ならではかと思います。

店舗ブランドを確立してきた背景について

ー他店と差別化のためにファッションやカルチャーで意識している事はあるか?

Apache: 普段からアンテナを張ることは忘れないで『より新しく』とか、技術を磨く事は意識してはいます。ただし、お客様一人ひとりとのストーリーをより大切にしています。例えば、髪を切るだけじゃなくて、お客様が話しやすい空間を作れるようには意識しています。

技術のクオリティも大切ですが、それ以上にお客様がリラックスができた時間とか、会話が楽しかったとか…そんな体験をして頂けるように心がけています。

倉庫を活用したポップアップストアとアメ車の展示

ー美容室でもBarbarスタイルが常識になりつつあるが、Apacehが理容業界に影響を与えたり貢献できたことは何か?

Apache:ここまでBarbarスタイルが確立されてきたのは、5、6年前かもしれません。オーナー(川上氏)がアメリカの有名バーバーを日本に呼んで、イベントやセミナーで全国各地を周りました。それを機に日本のBarbar界が少しづつ変わったのかもしれません。本場のものを生で見ることで、他店の理容師も美容師も少なからず感じる部分はあったはずです。

イベントに来場されていた方達は『カッコいい』とか、『こんなスタイリングを作ってみたい』と感じてもらったはずです。彼らが現場で実践することで徐々にBarbarスタイルが日本にも浸透していったのではないかと。

全国ツアーのように各地を走り回りました。その際に、『これだ!』と感じて頂けた方が理容室なども、今は全国的にも有名なBarbarになり、現在でもApacheとも交流があります。

店舗や本拠地の遠方でイベントを企画、運営をされる企業方は多い事だろう。売上や経費の観点のみでは決して効率が良くはない。ただし、従業員の息抜きや潜在的な顧客との出会いといった要素には必要不可欠であるはずだ。

理容室Apacheが全国的に知られるようになった背景には、移動距離が影響している。今回のイベント(RIDE WITH APACHE)では、本拠地から約430km程度の移動距離となるが、これらは東京から京都までの移動距離に匹敵する。過去に実施をされたセミナーイベントは、地元ではなく、全国ツアー形式で展開をしてきた。その実績は理容室Apacheの認知度を底上げし、潜在的な顧客との出会いを創出してきたはずだ。

非常に印象深かったのは、その活動において『お客様への恩返し』という視点を持ち続けていることだ。ヘアスタイルやファッションは奇抜さにばかり注目をされてしまいがちであるが、このような商売に向き合う姿勢が、現在のポジションを確立してきた所以なのではないだろうか。

取材・文:簡 孝充

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